命の使い方2


時透が鬼、黒死牟の髪の毛を玄弥の口元へ運ぶと玄弥は躊躇う事もなく髪の毛を食べていく。

みるみる両腕は再生し、胴も足側腹側それぞれから毛細血管が伸び絡み合い繋がっていった。だが、玄弥の呼吸は荒く、汗が滝のように流れつづける。
時透と柚充が声をかけてもブツブツ何かを呟くばかりでどこか視線は定まらない。
「玄弥!しっかりしろ頑張れ」
「実弥様を守るんでしょ!」


「………だ、大、丈夫だ」

息も絶え絶え、玄弥の顔は青白い。何も大丈夫でない事などすぐに分かる。でも、今そんな事は言ってられない。本人が大丈夫と言うならそれを信じるしかない。
「よかった、、これで玄弥の胴を縛るよ。手貸して」

玄弥の胴に布を巻き付けながら時透が口を開く
「柚充。厳しいこと言うかもしれない。
 でも、よく聞いて。
 俺の命をはさきっとここで消えてしまう。
 これだけの傷を負っていたら役に立たない。でも、
 俺は柱だから。死ぬでも、捨て身になるとしても
 役に立って死ぬつもり。
 でもまだ戦う力が残っている柚充は、
 あの戦いに考えもせず突っ込んで行ってはいけない。
 不死川さん、悲鳴嶼さん、俺がどれだけの傷を
 負わされても、勝機を見た時にしか動いてはいけない。
 ちゃんと自分の……柚充の命の使い方を
 見極めるんだ。いいね?」

時透の言葉は悲しくて仕方ない。
それが別れの言葉であると分かるから。
目の前がぼやけてしまう。

「まだ終わってないけど、柚充はよく頑張ったよ。
 
 そんな顔はしないで。
 皆言ってる。柚充は笑った顔がよく似合うんだ。
 ………だから笑って」

胴へ布が巻き終わり正座した玄弥は、柱稽古中に柚充が木刀を振り鍛錬する姿を思い出す。小さな体で男性隊士を打ち伏せる力を持っていても鍛錬を怠らず、努力をし続ける。才能で片付けられるものではないと思う。だから、自分も努力する事をやめたりしなかった。

「玄弥もだよ」
突然振られた時透の声に驚き、顔を向けた。
「自分に日輪刀の才より、銃が扱える理由を意味を
 よく考えるんだ。必ず、努力は報われる」


ーーーーーー

「じゃあ、頼んだよ二人とも」

手と刀を布で固定し、時透は先に戦場へ戻っていった。

時透が言った通り玄弥と共に柚充は耐える。たとえ血がどれだけ流れようと、実弥の指が落ちようと、、

「怖い、、、」
こぼれ落ちた言葉。柚充は咄嗟に手で口を塞ぐ。
肩に玄弥の手が触れ、その手も僅かに震えていた。
「俺だけじゃなくて安心した。
 ……悔しいな、、。

 でも、炭治郎が言ってたんだ、弱い奴が
 可能性を持ってるって。弱い人が壁を打ち破れたら、
 風向きは一気に変わって勝利への活路が開く

 一人じゃ押し潰されるかもしれない。でも、今、
 可能性は二つある。
 二人なら何とかなる気もしてくるだろ」


見上げた玄弥の顔もまた覚悟を決めていた。
「…………ありがとう」
「ま。柚充は弱ぇえ訳じゃねーけどな」

柚充が微かに笑うと、玄弥は懐から包みを取り出す。包みを開くとそこには黒死牟の折れた刃先。目玉の並ぶなんとも気味の悪いそれを手にまた柚充に視線を戻す。

「兄貴と一緒に居てくれてありがとな」

一言そう言うと、刃先を口の中へと押し込む。
刀だけあって口内を傷つけたのか手と口の隙間から血が流れる。

ドクンと体が揺れ、ありがとなと優しげな視線を向けた目が、赤く染まっていった。

ーー黒死牟と同じ目、、

「大丈夫。意識までは持っていかれちゃいねぇ」

その言葉に柚充は不安を首を振って打ち消し、玄弥に頷くと、尚も死闘を繰り広げる柱達へ視線を戻した。
 




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