命の使い方3


狙いを定めた銃から球が飛んでいく

《構わなくていいから。俺もろとも撃っていいからね
 絶対に躊躇するなよ》

時透の言葉を守り放たれた銃弾は黒死牟の体に撃ち込まれた。黒死牟が玄弥の姿を捉えた直後、その体からはメキメキと音を立てて木が根を張っていく。身動きを封じられた黒死牟に向かって悲鳴嶼と実弥の刀が迫る。

柚充は足を踏み込んだ。
ーー『まだ動いてはならん!!!守れ!!』

ゾワゾワゾワ

肌が泡立つような気配に刀をにぎる。
正直何が来るかは分からない。でも鬼柚充は守れと言った。
ーー玄弥だ。

咄嗟に玄弥の前に立ち、日輪刀を振る。
「爪々・科斗風っ!!」
黒死牟から一帯に斬撃が飛ぶ。4本の風の爪が三日月型を受け止めたかに見えたが、勢いは殺し切れず、柚充へ向かってくる。
「黒風烟嵐!!」
刀で受けた三日月型はギリギリ柚充を後退させたが、柚充の刀で真っ二つになり左右の二の腕に傷をつけながらではあったが背後へと吹き飛んでいった。

ーー防いだ?、、玄弥は?!!

玄弥へ振り返った瞬間柚充の頬を斬りつけ三日月型が飛んでいく。それは玄弥の左肩から心臓の位置にかけて切り裂いた

玄弥も柚充も目を見開く。
血が吹き出し切り裂かれた体は床に倒れ込む。
走り寄った柚充は玄弥の肩を揺らした。
「玄弥っ!!、、ぁぁ、、そんな、そんな」

ーー 一撃を防いだだけで気を抜いてしまったから、、

手が玄弥の血で赤く染まる。

ーー私のせいだ、、
  ……私の、、

「………ま、もる、、皆んなを、、、守る」

耳に届いた玄弥の言葉に柚充は我に帰り、顔を上げて走り出す。玄弥の目は諦めていなかった。柚充もできる事をやらなければいけない。黒死牟に目を向けた時、時透の刀が赤く染まっていくのが見えた。若竹色の日輪刀を鞘に納め、小さな体は突き進む。

ーー俺の肉弾、アイツの体の中だ、、
  
「血鬼術ーー」

重くて仕方のない腕を持ち上げ、玄弥は黒死牟へと向ける。再びメキメキと木が伸びてその動きは次第に封じられていった。
そんな中、柚充は時透を包むように、日輪刀を掴む布でグルグル巻きの手に自らの両手を乗せた。下半身が無くなりぶら下がる時透の体を支え足を踏ん張る。

「柚充?!」
「いきますよ時透様!!」

すると赤く染まる刀身が色を深め、黒死牟の傷を広げていく。

「斬れろぉぉぉおお!!」


「オォラァアアアア"ア"ア"ア"!!!」

黒死牟の頭の上では実弥が日輪刀を悲鳴嶼の鉄球をぶつけると、ギャキィという音と共に2人の日輪刀の色も赤く染まっていく。そのまま力を込め続け終いには黒死牟の頭が潰れ落ち、追うようにドロドロと赤黒い血が流れていく。
柚充は時透の刀を振りきり脇腹にはパックリと傷を残す。黒死牟の状態に目を向ける事なく距離を取ると抱えていた時透を横たえる。半身を失ってしまったその姿に言葉はない。羽織を脱ぎ掛けるとまた戦場へ走る。

実弥も悲鳴嶼も頭を失った黒死牟へ刀を振り続けている。どういうわけか頸はもう落ちているのに体が崩れていかないからだ。そして、赤い刃で負わせた腹の傷もまだ塞がっては居なかった。

ーーこれでもまだ終わらないのか、、

悲鳴嶼と実弥が柱稽古をしているのを見ていてよかった。2人が合わせて向かって行くのが分かる。柚充はその僅かな合間を埋めるように斬撃を繰り返す。終わりが全く見えない。それでも、たとえ腕が千切れようとも刀を振る事を諦めるつもりはなかった。

何度目か分からない刀を振り下ろした時、黒死牟の姿が消える。

ーーっ!!空振った?!!

そう気づいた途端、背中に激痛が走り、身体はゴロゴロと床を転がった。

「「柚充!!」」

『ハアーーーッ』
長い呼吸音に目を向けると黒死牟の頭が再生していた。その姿に人間の面影はない。
「クソっ!頭が再生しやがった!!」
「攻撃し続けろ!!
 頸を落とされた直後で身体が脆いはずだ!!
 再生速度も無惨ほどではない!!
 首を狙え!!何度でも!!」

柚充も痛みを堪えて立ち上がる。

出来てしまった僅かな間を走る。



ーーねえ、実弥様。
  神様が居るなら文句言ってやりましょうね
  何故こんなに苦行を強いるのかって

  どうして、どんどん奪って行ってしまうのかって。
  最期くらい皆で笑顔で居させてくれないのかって。

  でも

  もしかしたら神様も見守ることしかできないって
  涙を流しているかもしれませんね
  だったら、、やっぱり

  私達が諦めるわけには行かない。

  そうですよね?


悲鳴嶼の鉄球が頭を潰し、実弥の風が足と片腕を切り裂く。

「陸ノ型 黒風烟嵐」
柚充が黒死牟の懐へ入り込み、下から風を纏った刀を振り上げる。今まで黒死牟に攻撃した中で1番手応えがあった。だが、背中は痛み、息は上がり、反撃に備えて直ぐに距離を取ろうと後ろへ飛ぶが、足がもつれてまた床に転がる。慌てて顔を上げると黒死牟の体がバラバラ崩れて行くのがみえた。


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」

一気に力が抜けて大の字に寝転んだ。
 




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