仲間の為に2
ーー良し!やっぱり見えてない。
善逸が伊黒を間一髪抱えて飛び上がり、伊之助が鬼舞辻の腕を落とす。柚充は攻撃を仕掛ける実弥に向かっていく鬼舞辻の背から伸びる管を切り落とし、カナヲも善逸に向かう攻撃を防ぐ。
しかし、身を隠し鬼舞辻へ向かう4人の存在も直ぐに察知され広範囲に及ぶ管の攻撃に晒された。
札を切られ、その存在は完全にバレてしまった。
「いだアア!!やだアア!もォォ!!」
「くっ…」
「いっ…てェェェ!!この糞虫が!!」
「悪趣味にも程がある!」
「この紙いっぱい持ってるから、
何枚切られても山程あるんだよ!」
「伊之助撒き散らしてんじゃないって!」
「壱ノ型 委蛇斬り」
4人の姿を見た柱達からは多少ではあるが士気があがる。彼等が作ったわずかな隙を逃すまいと伊黒が刀を振るった。蛇を纏うその攻撃は鬼舞辻の腕を落とし、赤く染まった刃で切られたその傷は直ぐには回復しない。鬼舞辻が見せたその間に再び札を額に当て姿を晦(くら)ました。
ーー花の呼吸 肆ノ型 紅花衣
ーー雷の呼吸 壱ノ型 霹靂一閃
ーー風の呼吸 弐ノ型 爪々・科斗風
「つまらない小細工ばかりするな!!
蝿どもが!!」
ーーヤバいっ!!
飛び上がって型を繰り出した柚充の着地の位置目掛けて鬼舞辻の腕が鞭のように撓(しな)って迫る。
「参ノ型 塒締め」
柚充と鬼舞辻の間をすり抜けるように蛇が通り過ぎていった。
おかげで着地成功した事は言うまでもなく、更にそこから黒風烟嵐で脇腹を斬りつけ鬼舞辻から距離を取る。
「柚充!!その辺に居んだろォ!
その札寄越せっ!!」
「寄越せって!!その言い方っ!」
文句を言いながらも柚充は実弥の元へと走り、額にぺちっと札を叩きつける。力を入れたつもりはなかったが、すれ違いざまにした行動には思いの外勢いが乗ってしまった。
「、、テメェ……加減ってもん考えろやぁ!!」
後で覚えてろと言いながらも、札の効果に笑みを浮かべている。
「行くぞっ!!」
「はいっ!」
ーー漆ノ型 頸風・天狗風
ーー伍ノ型 木枯らし颪
実弥が起こす強力なつむじ風が柚充が起こした風に押される様にして鬼舞辻に吹き荒れる。
「ッチ。管は落ちるが胴まで届かねェ」
「入り込めれば良いんですけどね」
「伊黒ーーっ!!体を注視しろ
見え方が変わらないか!他の者でもいい!!
体が透けて見えないか」
悲鳴嶼の声が皆に届く。
ーー体が透ける??!
実弥と柚充は地を蹴って飛び上がる。
ーー捌ノ型 初烈風ッ
パキッ、バリバリバリ
鬼舞辻を中心に空気が震えたかと思うと、一帯に衝撃波が放たれ、一瞬にして体全体を殴り飛ばされた。
地面も壁もガラスも聞いたことのない音を立てて形を変え、鬼舞辻の前からは全てが消え去った。
ーーーーーー
飛び上がった時にそれをまともに受けた実弥と柚充は建物の上階へ飛ばされていた。
ーー体は痛い。でも何かおかしい
恐る恐る目を開けた柚充の顔は青ざめる。
実弥の腕に包まれ、受けるはずの大半の衝撃は全て実弥がその身に負っていたから。
柚充を掴んでいる腕は意識を失って尚緩んではいない。
「………実弥様っ!!実弥様!!
しっかりして!……なんで!なんで庇ったりするの。
私の怪我は直ぐ治るって分かってるのになんで!!」
「………冷てェから泣くな。……大丈夫かァ?」
「私より酷いのは実弥様でしょ!
ちょっと離して下さい。手当しなきゃ!」
「柚充。お前は最後まで生きててくれ。
玄弥が死んで、このままじゃ、
俺には何も残せなくなっちまう」
心なしかその手が震えている。
「何言ってるんですか!!
実弥様は死にません。死なせません。
誰が付いてると思ってるんですか?
人と鬼の血が流れてる継子ですよ?
実弥様のことは私が守ります。
だから
必ず帰りましょう。邸(いえ)に。」
一度ぎゅっと力を込めた後、実弥は柚充の頭を撫で腕を離した。
手当をしようとした柚充だったが、もう手持ちの薬も切れ、傷一つ処置をしてやることもできなかった。そもそも悠長に応急処置などとは実弥は考えておらず、痛み止めと止血薬を飲むと直ぐに動き出す。呼吸で回復を図りながら、柚充の肩を借り階段を降りていく。
「アイツは?」
階段を降りながら、実弥が柚充に問う。彼が言うアイツとは柚充の中の鬼。
「居ますよ。玄弥の安全が確約できるまで、
あちらに神経傾けてるんですよ」
どういう状態なのか理解したわけではないが、柚充を信じると決めた以上、その心は揺るがない。
「……そうか。、、ありがとな」
階段が続く、、
まだ、降りなければいけない。
「実弥様、、ごめんなさい」
「……あぁ??」
柚充は階段の踊り場に差し掛かった時、実弥を壁に押し付け寄り掛からせると、支えとなっていたと知っていながらその体を離す。
「動ける私は一刻も早く戻らなきゃいけない。
実弥様、私、欲張りなので、
守りたいものがいっぱいあるんです」
ーーやめろ、、離れていくな、、
「先に行きますね」
実弥に微笑むと柚充は階段を飛び降りていく。
「……待て。………待て!!柚充ーーー!!」
ページ: