仲間の為に4


鬼舞辻の腕と管の先端が炭治郎へと迫る。鬼舞辻の体を日輪刀で磔にしている彼にはそれに対する反撃の余地がない。柚充は倒れ、善逸も伊之助も動ける状態では無く、鬼舞辻を縫い止め続ける以外もう策は尽きている。

ーー誰か、、、
  



「もういい加減にしてよぉ!!」


叫びにも似たその声に目を向けると、蜜璃が涙を目からぼろぼろ流しながらも鬼舞辻の腕を背負う様に掴んでいた。「馬鹿ァ」と声を上げながら、鬼舞辻の腕を引きちぎる。
腕を一本失った鬼舞辻だったが、すぐに再生できないと悟ると反対の腕を蜜璃へ振りかぶる。

「甘露寺さん!!」
僅かに鬼舞辻の体が浮き、炭治郎は磔にしている刀を握る手に力を込めた。

もう一方の腕が迫る。

ーー捌ノ型 初烈風斬り

はじめ柚充が立ち上がったのかと炭治郎は思った。しかし柚充より研ぎ澄まされたその風に、すぐ違いを感じた。
ドンと音をさせながら実弥は鬼舞辻の肘の辺りを壁に突き刺す。
「不死川さん…」
炭治郎は実弥に気に入られていないのは分かっている。それでも、鬼舞辻を倒すという同じ目的の為に駆けつける。それがどれだけ心強いものなのかひしひしと感じていた。しかし彼とてあちこちから血を流し、無事でない事は一目で分かる。

「転がってる暇ねぇぞ柚充!!」

ーー暇がないのは分かってますよ
  いま、立ちますから、、。

やはり傷の治りが遅い。
ふと視線を鬼舞辻から外し柚充は理解する。

ーーああ。そういうことね

理由が分かればこそ、横になっては居られない。実弥に私が死なせないと言ったのだ。ゆっくり全集中の呼吸を深め立ち上がる。
顔を上げ鬼舞辻を見据えた時、その顔からはピシと妙な音がした。顔が縦にバカァと開きそこには炭治郎の顔ほどありそうな舌とおびただしい数の爪の様な形をした歯。引く事が出来ない炭治郎に向かってじわじわと迫る。

「頭下げて炭治郎!」
ーー爪々・科斗風っ!
風の爪は鬼舞辻の舌を切り落とし、顔面に傷を残すも、血だらけのその顔はそんな事は一切構いもせずに炭治郎の前で更に大きく口を開けた。炭治郎を守るべく走り出した柚充の肩を誰かが後ろへ押し戻しす。
予想もしないその力に後ろによろめいた柚充が炭治郎へと目を向けると、白と黒の羽織がじわじわと赤く染まっていく……

「伊黒様っ!!」

柚充を押し戻し、炭治郎の代わりに鬼舞辻に噛みつかれたのは伊黒だった。驚きに目を見開いた時、実弥の声が響く。
「夜明けだ!!
 このまま踏ん張れェェェ!!」


ーー風の型には突き刺す様なものは無い。
  どの型を使っても皆を巻き込んでしまう……
  どうしたら……


その時柚充の視界の端をひらりと光の蝶が舞う。

ーーーーーー

実弥の声に、大きく開いた鬼舞辻の口が伊黒を解放し、そして鬼舞辻自身も、顔を覗かせている太陽を己の目に写す。鬼舞辻は忌々しく思えて仕方がない。死に損ないの3人に縋り付かれ身動きが取れなくなっている事も屈辱でしかない。負の感情がどんどん止めどなく湧き続け、まるで火山が噴火する様に爆発する。
その爆発は鬼舞辻の内だけにとどまらず衝撃波となって炭治郎、実弥、伊黒、蜜璃そして柚充を襲う。


鬼舞辻の衝撃波に吹き飛ばされ、意識が朦朧とする中、実弥は胡蝶しのぶの姿を見た気がした。

ふわりと飛び瓦礫を避けるその姿は、その名を表すかの様に正に蝶。
衝撃波に押され鬼舞辻との間に距離は出来たもののその姿は、衝撃波が僅かに弱まるのを見計らい、地に足が付くと全集中を足に乗せ地面を蹴る。弱まったとはいえ衝撃波は止んでいない。それでも、勢いに押し戻される事もない。

「蜂牙ノ舞 真靡き」

実弥はいつか宇髄に言われたことを思い出す。
《柚充は見様見真似で、風の型を再現した》と。

ーーいや、あれは違げぇな。
  胡蝶だって上弦の弐を倒して満足なんてしねぇ。
  俺らと最後まで戦う、、そういう奴だ。


柚充の日輪刀が炭治郎の日輪刀の隣へと突き立てられた。
 




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