日の下


禰󠄀豆子の泣き顔が目覚めた炭治郎の目に一番に映った。

「ごめん、、怪我……大丈夫…か、、」

周りを囲むいたるところから、喜びの声が湧き上がる。僅かに記憶がある。仲間に危害を加えてしまったのに、誰も炭治郎の事を悪く言う者は居なかった。涙が溢れる。


ーー明るい、、眩しい、、、ありがとう。

  あったかいなぁ。

いつの時代でも明けない夜はなかった。
ぐちゃぐちゃになってしまった街だけれど、人は意外と強(したた)かなんだ。
これまでも、争いや地震、火事、災害、何度心を折られようとも、辛くても、苦しく涙を流しても、最後には立ち上がってまた前を見る。
どんな長い夜でも必ず日は登ると信じているから。


  そこには永遠より輝くものがある。


「炭治郎、、柚充を……知らないか?」
そんな中、炭治郎と共に柚充が鬼舞辻に取り込まれたのを目撃した冨岡がその名を口にした。

炭治郎の瞳が揺れる。
「無惨の中で、、手を伸ばしたけど、、
 取ってはくれなかった……」

炭治郎の言葉を聞いた各々が柚充の名を呟いた。
「じゃ、じゃあ!!柚充ちゃんも炭治郎みたい
 に鬼にされてて今度は柚充ちゃんを治して
 あげなきゃいけないとかそう言うわけ?!!」
「それは、ないと思う。柚充は…」

日に焼かれて消えてしまった

言葉にするには柚充が鬼だと言うようで炭治郎には憚られた。しかし、他の言葉も見つからず口籠もる。

「なんで胡麻子がきえなきゃなんねぇんだよ!
 アイツは鬼じゃねェ!鬼じゃねェんだ!!」
「さっきまで一緒に戦ってたのに……
 仲間だって、、言ったのに、、」

カナヲの目からも涙が止まらない。
どこか強がりで悪戯好きで、ちょっと心持ちが弱いところがあるけど、笑顔がよく似合うあの柚充が居ない。
善逸は少し離れたところで寝息を立てる柚充の師へ視線を向けた。彼はまだ知らないのだ。
大切に思っていた弟だけでなく、側に居続けた継子まで失った事を。

「そんな……」
冨岡は善逸の視線に気づいて肩に手を乗せた。


「大丈夫だ。奴は風柱だ。」

喜びと、悲しみの入り混じった苦い苦い終結だった。


ーーーーーー


無惨の叫び声は虚しく響き、炭治郎が消えていった先へと手を伸ばしたまま硬直していた。


『お前は私を斬るのか、、』
言葉と共に手はだらりと垂れ下がり、もう弱々しいという言葉しか当てはまらない姿だった。
「違うよ。
 私が正しいと思うことをするために此処にいる。
 それにはきっと刀はもう必要ないんだよ」
柚充が腰から鞘ごと刀を外すと、それはまるで鬼が消えてゆく時のように崩れていく。
手の中には刀の鍔だけが残った。実弥の物とよく似た6枚羽の風ぐるま。柚充はそれを胸に抱く。

ーー私は風柱の継子。
  私は私の責務を果たす。


「覚えていますか?柚の木の下の身重の女性を」
『日の下に出られない鬼にする価値もない女』
「違います。あなたが助けた女性です」
『助けてなどいない。あの女は死んだ』
「彼女は、助けられたと思っているんですよ」

「無惨。彼女はあなたを待っている。
 これまで一人だったかもしれない。
 孤独だったかもしれない。
 でも、あなたの罪をも一緒に背負って
 共に歩くと彼女は言ったの。
 

 だから行こう。」

柚充は無惨に手を差し出した。
 




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