お墓参り


「本当にこれ全部回るのぉ、、日が暮れちゃうよぉ、、」

「いいぞ。そんなこと言うなら、
 柚充のところも俺たちだけで行くから」
「何てこと言うのぉ!行くよ。絶対行く!」
炭治郎、善逸、伊之助、禰󠄀豆子が墓参りに来ていた。鬼殺隊士の全ての墓に手を合わせてから炭治郎と禰󠄀豆子の生家へと出発する計画となっていた。


「柚充…さん……少しだけ覚えてる、、
 羽織を頭にくしゃくしゃって、、」
「羽織を?」
「うん。太陽の下に出ても大丈夫になった後だと思う…」
驚く3人に禰󠄀豆子はその理由を尋ねる。
「あの羽織は不死川さんからもらった物らしいけど、
 煉獄さんの形見でもあるから、
 滅多に離そうとしないんだよ」
「伊之助が悪戯しようとして
 返り討ちにあってたもんねぇ」
「紋逸っ!!余計なこと子分に言ってんじゃねぇよ」
「いやぁーー!!俺まだ怪我人!
 足痛いのー!!やめてぇ!!」
ここはお墓だと言うのにそんなこと構いもせずに笑い合う。人が眠り悲しい場所である事に変わりはない。それでも、皆さんのおかげでもう鬼はいないんです。皆で笑いあえる日が来たんです。もう安心してください。むしろ一緒に笑い合いたいそう思うのだ。

「ってか伊之助!!お前柚充ちゃんのこと
 好きだったんじゃないのかよ?」
「ああ??何言ってんだぁ?
 アイツは力比べに丁度良いんだよ!
 それに、胡麻子はずっと風のおっさん見てただろ?」
「は?……ずっとっていつからだよ?」
「ずっとは、ずっとだろ」
ポカンとする善逸に禰󠄀豆子も笑っていた。

「お、俺はてっきり、風のおっさんと伊之助とあと、
 下手したら霞柱もバチバチになるんじゃないかって
 ヒヤヒヤしたんだけど!!」
「無一郎君は妹みたいに思ってたみたいだぞ。
 そもそも、皆、風とその派生組だから、
 何か他より通じるものがあったんじゃないか?」
「……俺のいたいけな心を弄(もてあそ)んで!!
 とんでもない柚充ちゃんだ!!」
善逸の声は流石に大きすぎて炭治郎からこらこらと声が上がる。

柔らかな風が4人を優しく撫でて行った。


「俺、胡麻子の墓には行かねぇ」
伊之助は手を空に上げ、背伸びをしながら言う。
「何言ってるんだ。
 全部のお墓に手を合わせるって決めただろ」
「行きたいやつは行けば良いだろ」
「何でそんなこと言うんだ?」

「胡麻子は、、柚充は石の下に居ねぇ。
 そもそもアイツは死んでねぇ。
 どっかで風にでも吹かれながらふらふらして、
 人助けとかしてんだろ」

だから行く必要がねぇと腰に手を当て自信満々に言う伊之助に善逸が吹き出す。
「確かに。お参りしてたら石の後ろから、何やってんのとか言いながら出てきそうだよね。
 俺も辞めようかな」

「2人とも、、」
「お兄ちゃん。私もそんな気がしてきた。
 なんかね、いつかまた会える気がするの」

「次会ったら、俺様は柚充に勝つ!!」
「もう刀必要なくなるのに、なにで勝つって言うんだよ」
「ツヤツヤどんぐり探しなら俺は負けねぇ!!」
「それは伊之助さんが得意なやつでしょ」
炭治郎の目の前で善逸、伊之助だけでなく禰󠄀豆子まで柚充の事を笑顔で語り合う。
「負けねぇっつたら、負けねぇんだよ!!
 柚充が言ったんだ!叶えたいなら口に出せって」


  炭治郎も笑って?


「ことだま、、、。」
「炭治郎も柚充ちゃんから聞いてたの?」
「那田蜘蛛山の後、伊之助に話してたなって。
 でも、柚充らしいと思うよ」
「お兄ちゃんやっと笑った!」
禰󠄀豆子の言葉に驚いた顔で善逸と伊之助を見ると彼らもまた笑っていた。
「柚充ちゃんの事となると沈んでたって
 自分で気付いて無かった?」
「やっぱり親分の俺様が居なくちゃいけねぇな!!」

心のどこかで、自分が柚充の一番近くで戦っていたのに、、、という罪悪感のようなものがあった。最後の記憶は笑った顔だったのに、それでも皆が大好きなあの笑顔を守れなかったその事実に押し潰されるような気がしていた。
生きて言葉を交わせていたら払拭できていたのかもしれないが、柚充とはそれが出来なかった。

不死川と会った時、彼もまた柚充の事を炭治郎に聞こうとしなかった。その時不死川自身も継子を守れなかったと思っており、語り合う胸中には至っていなかったから。

「不死川さんともちゃんと話したいな、、」

「これからでも遅くないよ!
 手紙書いて出そう!きっと喜んでくれるよ!」
「おっさん破り捨てるんじゃねーの?」
「玄弥も居るから大丈夫でしょ!」
呼吸が使えないやつだろ?返り討ちに遭うんじゃねぇーと伊之助が悪びれもせず言う。

「大丈夫だと思う。


 不死川さんからは、いつも優しい匂いがするから」



「でもどうなの?俺も行かないとは言ったけどさ
 柚充ちゃんの墓だけ花が無いとか可哀想じゃない?」

唸りだす面々の耳にカラカラカラと音が聞こえる。
顔を合わせ、誰からともなく音の方へ歩みを進めると、お墓の花を備えるはずの場所で六枚羽の風ぐるまが風を受けて回っていた。

「これなら十分だね」
「ああ。」

顔を見合わせ笑い合う。

「さぁ!次行くぞーー!!」
「伊之助!花振り回すなよ!」
「お兄ちゃん早くー」
「ああ。すぐ行く」


賑やかな一団を風くるまがカラカラ音を立てながら見送っていた。
 




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