走る2
校庭の隅で何かが飛び上がる。
きっとまた伊黒がペットボトルロケットの打ち上げをやっているのだろう。
しかしいつもとは違う。
伊黒ともう一人、飛び上がるペットボトルを見上げて飛び跳ねる生徒が。
あまり近くに人を寄せ付けない伊黒が。しかもアレは女子生徒ではないだろうか、、
実弥は伊黒の元へ走っていく。
ーーーーーー
実弥が伊黒の元へ辿り着いた時、飛び跳ねて居た生徒はもう居らず、伊黒1人実験の片付けをしていた。しかし不思議な事に、いつも伊黒と一緒に居る蛇がいない。
「鏑丸はどうしたんだ?」
「ああ。出かけている」
「鏑丸も出かける事あんのか?」
「まぁな。旧友との再会に嬉しそうにしていた」
ーー蛇の世にも旧友という概念があったんだな…
「さっき生徒と一緒に居なかったか?」
「生徒……生徒はここには来ていない。」
「来てない?!!ほら、居ただろ!女子生徒!!」
「俺には何のことだか分からない。
女子生徒が寄ってくることなど無い」
「ない……?」
ーー俺は、俺にしか見えない者を追っているのか?
今まで誰に聞いても知らねェ、知らねェって……
疲れてんかなァ、、、俺…。
ーーーーーー
ぐったりした様子で職員室に戻ると、自分の席に着いて机に突っ伏す。
「玄弥が言った大変な事とは何だったのか?」
「悲鳴嶼さん……もう、訳わかんねェっすよ。
屋上から飛び降りる生徒を見たかと思えば、下には
落ちてねェし、丁度下の美術室行ったら宇髄は見てねェ
って言うし、今度は追いかけて階段を降りた先で会った
煉獄に聞いても知らねェ、追いかけた先々で会った誰も
知らねぇんすわ……俺は一体何を追いかけてんのか…」
「………南無阿弥陀仏。」
「悲鳴嶼さん。それ洒落にならないやつ。」
突っ伏す実弥の頭に何かがぶつかってくる。
顔を上げると、そこには旧友と会っていると伊黒が話した鏑丸。
「おお鏑丸。…旧友と会ってたらしいなァ
もう、友達は良いのかァ?」
ピロピロと舌を出し、視線を合わせていた鏑丸は実弥の机をスルスルと降りていくと、実弥を振り返りつつ職員室の外へ行こうとする。
「ドアは空いてるから出れるぞォ?」
鏑丸を見送り席から動こうとしない実弥にスルスルと戻ってくると、、
ユラユラ、ユラユラ。ガプ。
「うわっ!!何だァ?」
ゆらーーーん。と実弥の袖に噛み付いて離れない。服だけで肉に噛み付くことはしないという見事なことをやってのけた。
「ついてきてほしかったのではないのか?」
ジーーッ
鏑丸の視線がずっとこちらを向いている気がする。
「わぁかったよ!行けば良いんだろォ!!」
実弥が立ち上がると鏑丸は袖を離し職員室の入り口へと実弥を導く。
ドアを出てすぐの廊下で再び振り返る鏑丸。
そこに落ちていたのは刀の鍔。
現代では目にする機会など無いに等しい。
しかし、彼等なら知っている。
共に別の時間軸で戦った彼等だから。
その形は風ぐるまを模した、6枚の羽。
「………ッ!!これっ」
タタタタタッーーー
階段を駆け上がる音が聞こえた。
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