宇髄合同遊郭潜入!? 2


「で?どうだったんだよ。
 まさか琴引いて遊んでただけじゃねぇだろ?」
「お酒飲んで遊んでただけの人が何を言うんですか。」
柚充が転んだ原因は。おしろいの匂いに負けたのは確かだが、立ちあがろうとした時に宇髄が足元に何かを投げてきたから。
その仕返しとばかりに柚充は宇髄に恨み言を言う。
「だけじゃねぇつーの」

2人は廓の屋根で煌びやかな花町を見下ろしている。

宇髄が柚充を同伴させた事も、転ばして退室させた事に意味がある事も、柚充は理解している。

人の口に戸は立てられぬと言うのだ。
子供であれば尚更のことである。
だからかむろ達の話を聞き出す為に柚充。という訳だ。


「荻野屋、ときと屋、京極屋。
 その辺の噂話が多いみたいです。
 足抜け?が多いとかなんとか…」
「まぁ、そこが大店(おおだな)ってのは確かだが、
 俺が集めた情報とも合致すんな。」
「あと、これは良くわからなかったんですけど、
 お化け?見たとか…」
「お化け?」
「はい。子供がお化けを怖がるのは良くある話なので、
 当てになるかは分からないんですけど」
宇髄は顎に手を添えて、かたや考え事をしながら柚充との会話を続けていた。
「この後はどうするんですか?
 怪しい店の内に踏み込むとか?」
「いいや。柚充は客としての潜入のみだ。
 不死川にも止められてるからな。
 次は嫁達に動いてもらうわ」
花町という特殊な環境に柚充を"女"として向かわせる気は今のところ無く、不死川にもそれは避けるという示し合わせとなっている。

「なにより、、
 柚充に遊女として忍び込める見込みは無ぇ」

「ああ。そうですか」


柚充が聞き出した、"お化け"と言うのが宇髄の中では引っかかる。
「客として次に行くのは……
 あー。そうだ柚充、、、ん?、、柚充?」

宇髄は血の気が引くような気がした。
目の前に居たはずの柚充の姿が


消えていた。
 



宇髄は柚充という少女を気に入っている。
あの不死川の継子でありながら、不死川を恐れもせずに彼の鍛錬をすっぽかし他の柱に鍛錬を乞うその度胸。努力は怠らず、打てば響く吸収力、人をちゃんと見て、物怖じしない会話も愉快。

しかしながら

柚充の負けず嫌いを失念してしまえば

何かとんでもない事が起きる事になる。



ーーーーーー

「どうしたのあの小さい子」
「何でも明日からの丸2日雇ってくれって
 転がり込んできたらしいわよ」
「2日?何でまた?」
「どうしても、入り用があるんだって」
「そんな簡単に稼げるわけないじゃない
 この仕事なんだと思ってるのかしら」

なんと柚充は京極屋に雇ってもらえるよう直談判した。たった2日という話に断られそうになり、覚えたての琴、そして見たばかりの花魁の所作を真似て即戦力だと思わせた。




ーー吸収力の高さは我ながら優秀だわ

目の前であれこれここでの生活の説明をする女将の話を聞きつつ内心自分に感心する柚充だった。

「それが、もうこの後、広間に出る事決まってるそうよ」

そう。琴と共に先程かむろの子に教えてもらった唄を柚充は唄った。
それがちょうど常連の耳に入り、常連に説き伏せられ女将は柚充を2日雇うことに決めたのだった。そして、常連の要望で支度が済み次第広間でさっそく唄を披露する事になってしまった。トントン拍子とはこの事である。


しかし、着付けと化粧だけは勝手がわからない柚充は、女将と世話好きな花魁に"お人形"にされている。
ひたすらこの着物はどうかしらと、取っ替え引っ替え。髪が短いのは鬘(かつら)をと……。

「……お、重い、、」
「文句言わない。
 2日とは言え借金があるわけじゃないけど、
 置いてやるんだからそれなりに稼ぎな」
女将は商売人らしくニヤリと笑った。


ーーーーーー



「おぉーまぁーえぇーなぁあああーー!!
 アホか!アホなのか!!
 遊郭(ここ)がどんなとこか分かってんのか」
「……だって、無理だって決めつけられたら悔しい
 じゃないですか。現に、出来ちゃいましたし」
「出来ちゃいましたし。じゃねぇっつーの!!」
宇髄は柚充の頭を掴み、前後左右へ揺さぶる。
「死んじゃいます!」と柚充が腕をバシバシ叩くと放してくれたものの、その視線は鋭いまま。

ひとまず広間での初お披露目は問題なく済んだ。むしろ既にお捻りが集まるという上々な出来で、女将は終始笑顔。が、柚充はこの初お披露目が噂を呼び、それが原因で宇髄に発見された。しかし、少なくとも今宵は客の前に出るような立場ではない為、他の女性たちが、慌ただしく走り回る中、他の曲も覚えなさいと琴の曲集を渡されひたすら練習させられている。
そこへ忍び込んだ宇髄というわけだ。

「マジで深入りすんじゃねぇぞ。
 その身が危ねぇ時は、コイツを嗅がせて
 不死川に祟られてるとでも言え。」
 
宇髄が柚充に渡した小瓶には吸うと幻覚を見せる液体が入っているという。

「いいか!ここは遊郭!
 酒を飲んで着飾った女の舞や琴、三味線を聴きにくる
 だけじゃねぇ。遊んで、笑って、そんなんは上っ面。
 結局は男が、欲を満たしに来るところ!
 肝に銘じておけ!」
宇髄は柚充の両方のこめかみを拳で挟んでぐりぐりとお仕置きした後、人が来る前にと忍びらしく窓から消えていった。
 




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