蝶屋敷3


「はじめっ!」
カナヲとの訓練が始まった。
今のところ10戦0勝9敗1分と言ったところだろうか。もっと負けてるかもしれない。こうなるだろうと借りた服も絞れば薬湯が出てきそうな気さえする。

柚充は実弥に全集中の呼吸について教わったわけではない。昨日のアオイとの訓練で得た感覚を頼りに小さな歯車を探すように試行錯誤しているのだ。

ビシャ…
また黒星が増える。

悔しい。他の訓練ではそれなりにこなしてきたのに。カナヲちゃんは怪我をした隊士の機能回復訓練の相手をするために訓練しているだけって聞いたのにこんなに差があるの?

カナヲを見る。しかし視線は交わらない、、
ますます悔しさが湧き上がる。

「カナヲちゃん。一つ約束してくれない?
 今から 3回以内に私が一度でも勝てたら、
 私のことちゃんとみて」
「だそうよカナヲ。良いわね」
カナヲはしのぶの方を見て頷く。その姿を見て気合いを入れた。大丈夫。できる。大きく息をついた

「……はじめ!」
アオイの声から始まり
今度はカナヲが伸ばす手が見える気がする。止める。また伸ばされる。止める。次、次、次。
ーー風?

ビシャ
「……あと2回」


「はじめ!」





ーーーーーー

「ーーーっっやったーぁぁぁ!!」
両の拳を高くあげて、体いっぱい喜びが溢れ出す。机を飛び越えてカナヲに抱きついた。
柚充はカナヲがどんな顔をしているかは分からない。でも、嬉しくてたまらなかった。


「ーーー柚充がつめたい」
小さく発せられたカナヲの言葉に返事はなく柚充が動く気配もない。
柚充は勝ち誇った顔で寝ていた。
「あらあら。風邪ひいてしまいますよー」
仕方ありませんねとアオイとしのぶが顔を合わせるのだった。



もうすぐ実弥が任務から戻る
教えてもらったこと、できるようになったこといろんなことを話したかった。
 




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