蝶屋敷5
「私、もう一日カナヲと訓練したいです」
実弥は怪我の処置も済んだ為、自らの屋敷に戻る事を柚充に告げると、連れて帰るつもりだったのにこの返事。しのぶに畳み掛けられたこともあり塩を塗られた気分であった。
屋敷で仰向けに寝転び天井を見上げる。
やけに静かな気がした。
《あの子を殺すのは鬼じゃない。
戦い方を教えない貴方です》
しのぶの言葉は的を射ており反論することができなかった。
「不死川ー。いるかー」
派手な声がするが無視する。
「いるじゃねーか。無視すんなよ」
勝手に入りやがってと機嫌の悪さを押し出した視線を向ける。
「そんな顔すんなって。
派手に胡蝶にまくしたてられたらしいな」
ーー誰だ。言いふらしてる奴は。
あの青い顔してた隠か?
次会ったら容赦しねーぞ。
「で、お前は何しに来たんだァ」
「なぁに、傷心中の様子を見にきたんだよ」
「帰れ!」
「待て待て。
お前の考えを俺様が聞いてやろうと思ったんだよ
派手にぶちまけやがれ」
コイツに言っても大丈夫なのかと思いながらも実弥の口からは言葉が紡がれる。しのぶの言葉はそれだけ刺さっていたという事だろう。
「……っ。まだ子どもだからと避けていたのも認める。
型は柚充が必要とした時に教えるつもりだった。
無力で戦場に送り出すつもりはなかったんだ」
「そうか。だがよ不死川。
柚充のやつ、煉獄の所に初めて行った時、
見様見真似でお前の型の動き再現して見せたらしいぞ。
呼吸は使えねーから動きだけだがな。
それに俺のところに来た日、うちの嫁達が面白がって
忍びの訓練付けたんだが、
それもそれなりに形になっていたぜ。
あの吸収力で子どもだからつー理由は
通らないじゃねーの?」
実は面倒見の良い宇髄は、実弥の話を色々聞いてやったらしい。
一方蝶屋敷、柚充、カナヲ、アオイの3人は同じは部屋に居た。今夜は同じ部屋で眠るためだった。
「でも良かったんですか?風柱様と戻らなくて」
「んー。良いか悪いかは別で、私はもう一日
カナヲとアオイと訓練したかったから」
カナヲと訓練すると何か掴めそうな気がするんだよーと手足をバタバタさせながらカナヲを見ると視線が合う。
カナヲはアレコレ喋るようになったわけではないが、視線を合わせ、目の奥で反応を示してくれるようになった。
小さな変化でもすごく嬉しい。
「じゃあ電気消しますね。
また怪我人増えたので私は明日も朝早いので」
「おやすみなさい」
ーーーーーー
翌朝
ーー……頭が重い、、心なしかなんかチクチク痛い…
すごく不愉快だ。
何だろう、訓練の疲れなのか……
「うぅ、、」
ーーなんかすごい腹が立つ
「うわぁぁぁあー」
飛び起きると笑顔のカナヲが身支度も整えて座っていた
視界に黒いのがチラチラする。きっとこれだ!私の安眠を邪魔した奴は!
深く息をつく。黒いやつに集中。今手を伸ばせばっ
「届くっ!!」
ばざばさ、ばさばさ、くわぁーー
「?……鴉?」
「なにごとですか!?」
柚充の声が屋敷中に響いたらしく、アオイがすごい顔して飛んできたのだ。
しかし、アオイの目にはニコニコカナヲと鴉を鷲掴みにしている柚充。
「……な、なにごとですか?」
柚充は一度鴉を見て再び視線をアオイに
「……鴉って美味しいの?」
見間違いでなければ一瞬鴉が真っ白になった。かと思えば必死に逃げようと激しく羽ばたく。
「それ、鎹鴉ですよ」
「かすがい…ああー本当だ。
よく見ると実弥様に飛んでくる鴉みたい」
「……そろそろ離してあげませんか?」
ああ。と手を離すと鴉は距離を取るように間合いの外に降り立つ。怒っているのか羽をせっせと整えている。
鴉の羽繕いを待っていても仕方ないので、自らの身支度を整える。カナヲと訓練をするのだ。今日こそしのぶ様が言った呼吸とやらのコツを掴むんだから!と意気込む。
布団も支度も整ったころ、鴉も気が済んだようにこちらを向く。
「……今日ハ屋敷ニ戻ルヨウニ」
それだけ言うと、言ったからな!と言いたげな雰囲気を醸し出して飛び去って行った。
「私、嫌われたかな……」
そうして賑やかに今日が始まる
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