勘違い
蝶屋敷から帰って一週間とちょっと経ったでしょうか。あれから長期の任務が入らず、実弥様とは毎日顔を合わせますが、何やら言いたげな視線は向けてくるのですが、一向に確信的なことは言ってくれません。
変わったことといえば実弥様も木刀の鍛錬をつけてくれる様になりました。全集中の呼吸は蝶屋敷での感覚を頼りに続けるよう心がけています。これで合っているのかは定かではありませんが。
「こんにちはー。甘露寺です」
「!蜜璃様!」
優しい桜餅色の髪が視界に入り思わず心が跳ねて走り出す。
「柚充ちゃん!」と両手を広げてくれるものだから柚充も手を広げて飛び込む
「ーーぐふっ!」
柚充の体は突然後ろに引っ張られる感覚で宙吊りになった。伊黒が首根っこを掴んだのだった。
「あぁ、ダメよ伊黒さん!
柚充ちゃん衝撃で口から泡、あわー」
「……ん。」
目を開けると部屋の天井。
ーー何故?
「柚充ちゃん!起きたのね!よかったわー」
蜜璃に抱きしめられ頬擦りが始まった。
蜜璃は気がすむと振り返り「伊黒さん!謝らないとダメよ!」とか言っている。
体を起こすと、縞々羽織が目に入る。
「……はっ!伊黒様だ!こんにちはデス」
なぜ自分が泡を吹くことになったのか理解していない柚充は座り直して律儀に挨拶をした。
伊黒は良心が少々傷んだが完全に謝るタイミングを逃してしまう。
そして更に顔を上げた柚充に困惑…
そう。柚充が目を輝かせて見てくるのである。
「……?」
「伊黒様……その白い子…」
「か、鏑丸?」
「触ってはいけませんか?」
驚く速さで柚充は伊黒との距離を詰めてきた。柚充は蜜璃に預けられた時に伊黒と会う機会はあったが、いつも離れたところで観察されていることばかりだったので、近づくには今しかないと思ったのだった。
「だ、、ダメではないが…」
柚充がゆっくり手を伸ばすと鏑丸はその手に擦り寄るように近づいて行った。
「か、、かわいいー」
柚充から危険を感じなかったからか鏑丸は何食わぬ顔で柚充の腕をつたって伊黒の肩にいる時のようにその肩に落ち着いた。
伊黒は内心すごく驚いたが、柚充を信用する材料には十分であった。
「ん?伊黒ちっちゃくなってねーか?」
不死川が部屋に入ってくるなり後ろ姿の柚充を見て言うと蜜璃が笑いを堪えて肩を揺らした。
たしかに伊黒と柚充の髪の長さは似ている。
「実弥様!それは伊黒様に失礼です」
悪い悪いと言いながら腰を下ろす。
「で、何の用だったんだ?」
「私は柚充ちゃんとお団子を食べようと思って。
伊黒さんは話があったそう、、です。」
そう言いながら何処からか大盛りのお団子包みを取り出した。
実弥は伊黒と目を合わせると「甘露寺、縁側で外を見ながら食べるといい。柚充。お茶を」
と言い二人分のお茶をお盆へ移動した。
「伊黒様。鏑丸にはあげてはいけませんよね?」
「……少しなら大丈夫だ」
ダメと思っていたらしいが、いいと言われ花が咲いたような笑顔で蜜璃と共に縁側へ向かって行った。
女って増えるとにぎやかだ。
実弥と伊黒は口にしないながらも思ったとか、思わなかったとか…。
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