藤襲山
「……っ!」
「柚充、、。」
カナヲと柚充は明け方日が上り始める頃から藤襲山を目指して走っていた。が、実弥との手合わせの傷が胡蝶のところから少々拝借した痛み止めを飲んでも、時々痛むのだった。
カナヲには大丈夫!と言っているが、片腕と肋骨1、2本に多分ひびが入っているし、あちこちあざだらけである。よくもここまでやってくれたものだ。
それでも柚充は走り続けた。
一方実弥は胡蝶の元を訪れていた。
「……二人は最終選別に向かった様ですね」
「何やってんだ、動いていい状態じゃねェーのに」
しのぶはため息を吐くと実弥に薬箱の中を開いてみせた。
「痛み止めや包帯など薬が少し減っているんです。
多分柚充ちゃんが持ち出したんでしょう」
柚充は蝶屋敷に出入りした際、怪我の手当てや薬学も学んでいた。でも、蝶屋敷の人達は誰も柚充が失踪前に来た事を知らなかった。
「……それに関しては、、宇髄が…
"うちの嫁達が面白がって忍びの訓練付けたんだが、
それもそれなりに形になっていたぜ"と言っていた」
「・・・・・。
"ぜ!"じゃありません!あのキラキラ派手派手男!!
使って良い時と場合まで教えておきなさいよ!!
……… 柚充ちゃんが帰ったら
お仕置きしなきゃですね。ねぇ不死川さん…」
笑顔のしのぶが恐ろしく見えたのは、実弥の見間違いではなかっただろう。
ーーでも、柚充ちゃん。
貴方が持ち出した薬だけではきっと足りませんよ…。
しのぶはカナヲと柚充が心配で胸が潰れる思いだった。
ーー姉さん。二人を守って……。
ーーーーーー
「……あと2日なんだけどなぁ、、」
柚充は宇髄嫁衆仕込みの忍能力で木の上に身を潜めていた。5日までは食料を確保しつつ鬼を斬って過ごしていたが、痛み止めが切れてしまった。痛み止めで誤魔化し動き続けていた分その反動は大きい。
「やばい……動ける気がしない」
とりあえず、気配を消すことに集中しなければ命はない。
その時不運にも柚充が隠れている木が大きく揺れる
ーー!?、、っ!鬼の気配はしなかったのにっ
柚充の体はなす術なく地面に引っ張られていく
受け身を取ろうにも体が動かない、、。
木から落ちながら柚充がその目で捉えられたのはイノシシだった。
ーーあぁ、私は鬼じゃなくイノシシにやられるのか……
実弥様に顔向けできないわ。
「………っ!あぁぁああー!、、くぅっっ…」
直ぐに嫌でも現実に引き戻される。落ちた衝撃でひびが入っていた腕が折れてしまったらしい。
ーー痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
唇を噛んで意識を失うのだけは回避していた。
《呼吸は使い方によっては怪我の応急処置にもなる》
ーー誰の声だっただろう…。今は誰でもいい。
骨を元通りの場所へ。
筋肉で骨を支える事を想像。
呼吸を整え集中。
くっつくわけじゃないけど絶対に諦めない。
回復の為に動かず気配を消して落ちた場所で耐え続けた。
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