藤襲山4
「あ、柚充様。目が覚めましたか。
もうすぐ蝶屋敷に着きます」
柚充は隠の背に背負われ藤襲山から戻っていた。隠の隣にはカナヲが居た。
不安そうな目を向けてくるものだから、平気だよとわらってみせた。
しばらく背に揺られていたが、蝶屋敷の門の外で下ろしてもらいカナヲと並んで中へ。隠は少し離れて後ろに着いてくる。
あらかじめ知らされていたらしく、中にはしのぶだけではなく、実弥の姿もあった。
確実に怒っている。それでも今は逃げてはいけない
「……実弥様、只今戻りました」
顔をあげて実弥を向いたその瞬間
パァン!!
実弥の手は柚充の頬に振り下ろされその勢いに負けて柚充はよろけ、片膝をついた。
「…っ!不死川様!あんまりです!」
「隠さん!黙って!、、私が悪いの」
そのまま膝をついて頭を下げた。
「黙って最終選別に行ってすいませんでした」
実弥は、一度柚充を睨みつけると何も言わずに去って行ってしまった。
「さて、怒っているのは不死川さんだけではないですよ」
頭を下げる柚充の前に立ったのはしのぶだった。もちろん柚充には心当たりがある。蝶屋敷に忍び込んで薬を持って行った事。
「欲しいと言えば、ちゃんと足りる量を用意してあげる
のに、薬が切れたらどうするつもりだったんですか。
薬が偶然落ちているなんてない事なんですからね。」
全て見透かされているのだ。
「……すいません」
「カナヲもこちらに」
隠の隣にいたカナヲが柚充の隣に正座した。
「二人とも黙って危険な事をしてはいけません!
何かあったらお館様や姉さんに
顔向けて出来ないじゃないですか!」
柚充はしのぶの動く気配に再び平手打ちを覚悟して身を縮め拳を硬く握りしめた。
しかし覚悟をした様な痛みはなく、ふわりと優しく包まれた。しのぶがカナヲと柚充を纏めて抱きしめたのだった。
「よく無事に帰りましたね」
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