入院4
ーー私はいつの間に寝てしまったんだろう…
ベッドから体を起こし、周りを見渡す。
色の変わる事が無かった日輪刀が開いている窓からの月明かりにちょうど照らされて存在感を放っていた。
ーー私に鬼は斬れない。
実弥様にも、日輪刀にも見捨てられてしまった。
選別に残っても何の意味もなくなってしまった。
《俺はお前が大嫌いだ!》
初めて向けられた明らかな敵意。それは真綿で締めつけられる様な泥の中へ落ちて行く様な、とても嫌な感覚。
ーー私の居場所はもう、どこにも無い……
再び視界が歪む。もう枯れてしまうほど涙は流れた筈なのに。もう流してもどうしようもないのに。
自らの腕を爪が食い込む程に掴んでいた…
「それ以上力を入れると傷になる……」
腕を掴む手に添えられた手と、
ずっと聞きたかったその声……。
「……さ、さねみさまぁ。」
みたび涙が溢れて、柚充は実弥の腕に縋り付いた。言葉も堰を切ったように溢れ出す。
「本当にごめんなさい。
言いつけ守らなくてごめんなさい。
悲しませてごめんなさい。
お願いです…見捨てないでください。
嫌いにならないでください。継子で居させてください。
私、、行くところもなくなってしまう。
嫌いにならないで…要らないって言わないで……」
口を挟む暇もなく柚充は謝罪とお願いを繰り返す。きっとそれは小さな体に伝えられずずっと溜め込み続けた本当のきもち。
実弥は空いていたもう片方の手を見つめると震え泣き続ける柚充の頭に乗せた。そして小さく「…わかってる」と。
柚充の気がすむまでと頭を撫でていたが、ふと目に止まった日輪刀。その視線の先に気づいた柚充が腕を離し、掛け布団を握り締めた。
「わたし、……出来損ないなんです。
カナヲの刀は色が変わったのに、、
私の刀は応えてくれませんでした。選別に残っても、
このままじゃ戦えません…誰も、守れない…。」
成り行きで鬼殺隊になったはずなのに、柚充が人を守るために刀を振ろうとしていたことに実弥は驚きと心が温かくなるのを感じた。
「それに関しては、明日もう一度だ。」
「…………はい」
「早く怪我を治せ。そして帰ってこい。
安静だった分取り戻すぞ」
「……帰って、いいんですか、、。」
ーー俺の継子だからな。
病室の外でしのぶが安心の笑みを浮かべていた
翌朝、柚充が刀匠としのぶが見守る中、日輪刀を抜くとその頭身は若竹色へと色を変えた。
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