入院5


日輪刀が若竹色へと変わった日から柚充の回復は目に見えて早くなった。

しのぶは実弥が柚充を見舞いに来たことを知っている。わざわざ隠に柚充の元を離れるように指示をしたのも彼女であった。継子とはいえ女の子の病室に夜な夜な忍び込んだことは褒められたことではないが、柚充の様子が一気に好転したのだからと目を瞑る。

「少し早いですが、呼吸の訓練再開して良いですよ。
 でも、動くはまだ散歩くらいにしてくださいね」

3週間の期限の4日前に絶対安静が解かれた。隠の見張りも無くなり、心の締め付けも解消されて見える景色すら変わって見えた。




「柚充絶対安静解けたんですね!」
散歩に出ると洗い物をしていたアオイが走り寄ってきた。目の前で立ち止まると両の手で柚充の頬をつまんだ。
「もう!心配したんですからね!
 体はボロボロ目は真っ赤。
 心ここに在らずって感じで…」
「ご…ごめんなひゃい。もう無理はしまへん。」
「もう、大丈夫なんでしょうね」
疑いの目を向けられその視線が痛い…。
「絶対約束ですよ!」
柚充の是の返事を待って、アオイは手を離すと、少し恥ずかしかったのか背を向けて仕事に戻っていく。

「アオイ!ありがとう!」

少し振り向いたアオイの顔は笑っていた。



ーーーーーー

数日後
「柚充ちゃん、今日から機能回復訓練です。
 が、貴女には1つ反省してもらわなきゃ
 いけない事があります」

ーーしのぶ様……今日の笑顔怖いです。

「分かっているとは思いますが、
 ここに忍び込んで無断で薬を持ち出した事です」
「……はい」
「そうですねー。大部屋の病室と道場の掃除を
 1人で3日間やってもらいましょう。
 勿論呼吸常中も続けて下さい。」
なほ、きよ、すみの柔軟は受けるように。

「……はひ、、」


数日間、柔軟を受ける柚充の叫び声が道場から聞こえていた。
 




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