旅支度


退院から2日みっちりと実弥にしごかれた。
また蝶屋敷に逆戻りにされるかと思ったが、選別前とは違って怪我をさせるものではなく、柚充を導く為の鍛錬。手を抜かないあたりが不死川実弥という人の優しさなのだろう。
しのぶに課された掃除が意外と機能回復にいい効果があった気がする。
なんだかんだ理由をつけて為になる事をしてくれる。柚充は人に恵まれた。



小柄な鴉が柚充の前に降りてきた。

「子ドモノ失踪ツヅク向カウ」
「君、実弥様の鴉じゃないよね?、、誰の子?」
「いや、お前のだろ、、」
「……へ?」
ーー?あー薄ら聞いたような…選別の後だよね、、
  んー。あの時ほとんど意識なかったし、、
「ま、仕方ないよね!」
「自己完結しやがったな…」



「でも、私、実弥様の継子なのに、
 任務一緒じゃ無いですね。」
「まぁそういう事もあんだろ」
「…そうだ!私居ないからって、
 無茶な戦い方はダメですからね!!
 戻ってきたら傷一つにつき1デコピンですよ!」
「何でお前にデコピンさせなきゃならねーんだ。
 良いわけねーだろ。」

「痛っ!!何で、デコピンするんですか!」
額を抑え抗議の目を向けると、口の端が上がっていた。

何だか悔しくなって「ふんっ!」と顔を逸らした。


ーーーーーー

支給された隊服に袖を通す。
「よく小さい隊服あったな」
「これでも伸びたんですよ!」
上衣はしのぶやカナヲと同じ仕様で下は八分丈の幅広ズボンに足首まである紐靴。
腰のベルトに応急処置ができるように小さなポーチを付けた。
「あと、こいつ羽織っていけ。」
ぽんと風呂敷包みを渡され広げてみると淡い黄緑地に裾には六枚羽の風ぐるま模様が並んだ羽織が入っていた。

「これ、、」
「…あー。仕立てろって言ったのは煉獄。
 柄(考えたの)は煉獄弟だからな」
背を向けて言う姿はきっと照れ隠しで、最終選別に通過した事を祝ってくれていたと実感するには十分な贈り物だった。


「ありがとうございます!」


そんな背中に抱き着いた。
 




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