藤の家紋の家


「うーん。これ絶対に怒られるやつだよね?」
実弥の鎹鴉が、【もどれ!】の殴り書きを足に付けて飛んできたのだ。
「きっと、2日失踪した事についてだと思うんだけど…」

ーー返事しなきゃしないで怒られるかな?
  でも怒られるの嫌だし。
  じゃあこれしかないな。

普段は足に結びつける手紙を自らの鎹鴉に咥えさせた。

「いい?実弥様見つけたら、上で落とすだけでいいから。
 君も捕まらない様にね!」


頼んだよーと見送る。
手紙には一言。


【断ります】




ーーさて、確かこの近くに、ひささんの屋敷がある。
  鎹鴉が戻るの待ちつつ会いに行こう!

ひささんこと藤の家紋の家のおばあちゃん。
何度か里の母様と会いに来たことがあった。

門前まできたが何やら中が騒がしい。

「こんにちはーひささん?」
「おやまぁ。柚充ちゃんかい?」
大きく…と言いかけて柚充の服装に気付く。
「鬼狩り様になられましたか」
柚充はひさの手を取りはいと返事をし笑った。


「それにしても、何だか賑やかですね」
「3人の鬼狩り様がいらしてます」
「へー」
話を聞きながら縁側を歩いていると突然目の前の襖が外れて茶色と黄色い何かが庭先に転がり落ちてきた。

ひさが巻き込まれていないかを確かめていると部屋から人が出てきた。
「善逸!伊之助!暴れるなって言ってるだろ!
 また襖はずして…あれ?君は…」

ーー見た事ある気がする。
「……あ確か、波の着物の」
「何で炭治郎ばっかり女の子の知り合いが居るんだよ!!
 ……って、確かこの子、選別で俺より
 ボロボロだった子じゃん!」
なんか手を握りながら、そうだよねー怖かったよねーオレもーと口を挟む隙なく言っている。
距離が近過ぎて引いていると、炭治郎という少年が黄色い頭の少年を引き剥がしてくれた。



「俺は炭治郎、あれが善逸、そしてあっちが伊之助だ」
名乗りながら3人を眺め……
ーー3人?……炭治郎、善逸、、、
「いのしし?」


柚充に藤襲山での記憶が蘇る。
痛み止めが切れて木の上で身を潜めている時、イノシシがぶつかってきて………
「あなただったのね!!!」
柚充が伊之助に詰め寄ろうとすると伊之助は後ろに飛んで距離を取る。
「俺様はお前みたいな胡麻味噌知らん!」
「胡麻味噌って何よ!私は柚充!」
「あー見えん見えん。ごまみそー」
「はぁ?本当の胡麻味噌知らないの?」


「二人とも何があったか知らないが止めるんだ」
「炭治郎の言う通り落ち着けって」

「見えんって、目が悪いんじゃないですか?」
「ちっちぇだけだっつーの」
「何だイノシシあたまー!」
「ただのイノシシじゃねー!山の主だ!」



「「ふがっっーーー」」

突然頭に衝撃を受けて柚充と伊之助は気絶した。
 




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