旅支度2


すっかり日も暮れてしまった。

ーーあと一本って言ったのに、、。
時透はあのあと5本は柚充を打ち伏せた。

そのおかげか何なのか、蝶屋敷に向かう心算ができた。

「でも、どんな顔して会えばいいんだろ……」
病室の前で足が動かなくなってしまった。
扉を開けようとした手も動かない…

「やっぱり柚充ちゃんだ!!」
「っ……善逸?」
突然扉が開いて中から善逸が飛び出してきた。どさくさに紛れて抱きつかれているのは気のせいではない。

「コラ!薬が嫌だからって柚充にくっついて
 誤魔化すんじゃありません!!」
アオイが首根っこを掴んで引き剥がしていく。
「あ!思い出した!柚充ちゃん!俺に謝れ!
 那田蜘蛛山で俺の頭踏んで行ったでしょ!!
 アレ傷付いたんだからね!!
 声も掛けずに行っちゃうし、
 悲しかったんだからね!!」


「………………??・・・ああ。

 ごめんね。身の危険を感じて」
「今の間!今の間何!!この子忘れてた!
 絶対に忘れてたよ!炭治郎ぉ柚充ちゃん酷いよぉー」
「いいから貴方は薬を飲みなさいっての!!」
アオイはそのまま善逸を引きずって行ってしまった。

善逸を視線で見送り、柚充は炭治郎のベッドの隣に置かれた椅子に座った。

「あの、、……炭治郎、ごめんなさい!!私の師匠が
 禰󠄀豆子ちゃんに……早く謝りたかったけど、
 どんな顔して会えばいいのか分からなくて……
 師匠の代わりにはならないけど、
 気がすむまで頭突きして下さい!!」
頭を差し出す。
炭治郎の頭が硬い事は身をもって分かっているから、服をぎゅっと握りしめた。

「柚充の事は怒ってないよ。
 あの傷だらけの人の継子ってのには驚いたけど。」
「でもっ!」
「柚充はやめてって言ってくれてたし。
 それに俺あの人の事は許してないし。
 頭突き食らわせるの諦めてないし。」
だから良いんだ。と炭治郎は笑った。

「優し過ぎる……一発くらいガツンとやってくれた方が
 かえって気が楽になりそうだよ」
柚充は困った笑みをうかべた。


「あの、、禰󠄀豆子ちゃんは?」
「別の部屋で寝てるよ。
 那田蜘蛛山での傷を直す為なんじゃないかな」
「………そっか。」
「また、責任感じてるじゃないか?
 柚充のせいじゃないぞ。ほら、
 もう気にしないでくれ。禰󠄀豆子もその方が喜ぶから」


「そういえば柚充。伊之助が変なんだ。
 喉やられてるのは分かるけど、なんか元気なくて。
 口を開けば"弱くてごめん"って。」
「………多分それ、私がとどめ刺しちゃったんだよね」
これも出発前に片付けなければ、、。

"とどめを刺した"発言にギョッとしている炭治郎に伊之助は?と聞くと、なんと同じ病室に居た。静かすぎて逆に恐ろしい。今度は伊之助のベッド脇の椅子へ移動した。


応急処置をしたから知っては居たが、やはり怪我は酷そうだった。被り物を顔に乗せているからどんな顔しているかは分からない。

「伊之助?」
「…ゴメンねヨワくっテ」

ため息を一つつき、柚充は諭すように言葉を紡ぐ。
「今はそうだね。でも伊之助?"ことだま"って知ってる?
 自分は弱い弱いって言ってるとね、どんどん自分が
 気づかないうちに心の中から弱くなってしまうんだよ。
 だからね、自分のためにも"弱くてごめん"じゃなくて、
 "もっと強くなる"って言うの。
 早く怪我治して、強くなるよ。

 私はもっと、もっと強くなるんだ」



「胡麻子……」
「柚充だよ。、、いい事教えてやったのに今の時間返せ」

「俺はお前に勝つ…」
「私は負けないよ?」


さてと椅子から立ち上がり、炭治郎の元へ戻る
「伊之助の事だから、
 きっと怪我が治る頃にはけろっとしてるよ」
「ありがとう。
 ああそうだ。柚充は任務に出るの?」
「明日の昼過ぎには出るかな。今回は遠方らしいから、
 当分会えないね。でも、お互い頑張ろう」

じゃあまた
病室を後にしようとした柚充に炭治郎が声を掛ける。
「今度はまた禰󠄀豆子にもあってくれ」
「うん。楽しみにしてるね」



その足でしのぶから薬や、包帯を分けてもらい屋敷に戻った。
 




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