旅支度3
朝一で柚充は隊士の墓に来ていた。
初めて煉獄家に行った帰りに実弥に連れられて来たところ。
これだけある墓の中から迷わず2つの墓に手を合わせたという事はきっと実弥の特に大切な人だったと思うと、柚充も背筋が伸びるような気がして、何度か1人でも来ていた。
「…… 柚充?」
名前を呼ばれ振り返るとカナヲが居た。
「カナヲ?どうしてここに?」
「…姉様の所に、、」
カナヲの視線の先は今柚充が手を合わせていた場所。
「そっか。
実弥様はカナヲのお姉さんの所に来てたんだね。
優しい顔するから、誰のところに来てるんだろうとは
思ってたんだよ」
へへと笑うと、カナヲは少し悲しげ顔で笑った。
柚充はカナヲを抱きしめた
「このあと任務に出てくるの。遠方だから、
ちょっと会えなくなるけど、帰ったらアオイも誘って
一緒に甘味処行こうね。約束。」
「…約束」
カナヲと別れ、今度は煉獄家へ向かった。
杏寿郎と千寿郎は庭で稽古をしていた。
「羽織のお礼言えてなかったので」
「うむ。気にする事はない!似合って何よりだ!」
「裾の風ぐるま。すごく気に入ってます!
千寿郎くんが考えてくれたって実弥様から聞いたよ。
ありがとう!!」
「柚充さんらしいかなと。風の呼吸使われますし」
「柚充。出立まで時間はまだあるのか?」
「昼過ぎなので、もう少しありますね。」
「では、手合わせ願おうか」
「…そっ、そんな!
…こちらこそよろしくお願いします。」
木刀を受け取り、向き合って構える。
お互いの呼吸があった瞬間が始めの合図
刀を振り上げ正面を狙う。
《だったらそれを生かす方法で戦うしかないでしょ。
馬鹿なの?》
ーー正面から行っても打ち負ける。
間合いギリギリで飛ぶ。空中で体を捻り、杏寿郎の背を狙い木刀を振り下ろす。杏寿郎はすかさず体の向きを変え下から振り上げるように柚充の攻撃を打ち払う。
宙で回転し地面へ。しかし、足がつく瞬間杏寿郎に足払いをされ片手をバネに後ろへ飛び距離を取る。
木刀を構え直し、今度は正面から横に薙ぐ。そのまま腕を返して上へ。
上から振り下ろした木刀が杏寿郎の木刀と正面で交わる。
「っ!ーーー」
木刀ごと吹き飛ばされたが、空中でくるりと周り勢いを和らげる。
地に着くと足の指先に力を込め、再び杏寿郎へ踏み込む。
木刀を振り下ろす、しかし、杏寿郎の木刀と柚充の木刀が交わった瞬間、今度は力負けしてしまい柚充の手から木刀が離れ飛んでいってしまった。
「ここまでだな」
「……… 柚充さん!驚きました!
飛ぶなんて思っていなくて」
「でも、杏寿郎様にはやっぱり手も足も出なかったよ」
「しかし驚かされたのは確かだ。足払いの後、
体制を立て直せるとは。努力の賜物だ!」
杏寿郎は少しむくれた柚充の頭を撫でる。
杏寿郎が褒めてくれるのは心地よい。その手はおひさまみたいで暖かい。
「でも、もっと強くなります!
だからまた、手合わせして下さいね」
「ああ。楽しみにしているぞ!」
柚充は煉獄家を後にした。
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