師弟任務


「……実弥様?ちょっと鬼、居過ぎませんか?」
 
屋敷を出てはや幾日、目的地にはだいぶ近づいたらしいが、昼間は移動の為歩き、夜になると必ず鬼が出る。なりたての理性を持たない鬼とはいえ毎晩4、5体越えで出現されると文句の一つも言いたくなってくる。
しかも実弥は実戦訓練だと称し、全て柚充に斬らせていた。

「だろうな」
「だろうなって、、」
「原因は稀血だ」
「まれ、、、あーー!
 そうじゃん!実弥様稀血じゃん!これかー。
 鬼さんホイホイじゃん!!」
師匠を"これ"扱いとは失礼も甚だしい。
「……ほい、ほい…?」
「原因わかって喜べばいいのか悲しめばいいのか
 混乱している所です!!」
「おまえでも流石に疲れてきたか…」

「丁度いい。今日はあそこで休むぞ」
実弥の視線の先には藤の家紋。


ーーーーーー

夜に安心して眠ることが出来る事もさることながら、美味しいご飯にふかふか布団は何よりも輝かしいものに見えた。

「わーわーきゃっきゃっとお前はガキか…」
「なんと言われようと体力回復した者勝ちです」
「うるせーから、外出てくる。先寝とけ」
「はーい」

実弥が外に出てきたのはもちろん、自分の血に惹かれて寄ってくる鬼を切る為。
呼び寄せてしまった鬼を斬らなければ、のちのち藤屋敷に何かしらの被害が出てしまうかもしれないからだ。

毎晩、宿屋に泊まった時も、野宿の時も柚充が寝た後は実弥が鬼を斬っていた。
この血が鬼を呼び寄せるのは好都合。斬れば鬼が減るのだから願ってもない事だ。しかし、守るべき者がいるとその意味合いも変わってくる。

ーー考えても仕方ない。斬り続けるだけ



ーーーーーー

鬼の出現が落ち着き、部屋へ戻った。
「げっ、、、。」

出る時は何も考えていなかったが、、布団が並べて敷いてあった。まぁ、ここまでは我慢できる。
「何故、あんなに喜んでいた布団で寝ない?」

柚充は布団から出て、畳の上で丸くなって寝ていた。畳で寝ても風邪は引かないとは思うが、流石にどうかと思う。おい。と声をかけるものの、熟睡しているようで動かない。
呆れてため息を吐き、仕方ないので布団に戻すことにする。起きるんじゃないぞと思いながら抱き上げた。

「……ん、、」
声に驚き、落としてしまうかと思ったが、無事布団に下ろした。
ほっと息を吐くと、自分の布団へ転がり柚充に背を向けるように横になった。


もぞもぞもぞもぞ
後ろで柚充が動いていた。
寝相が悪いな。などと実弥は思った。

もふ。

背中に何かぶつかる。
疑問に思っているうちに手が伸びてきた。
確実に柚充だ、、。

起こさないようにそーっと背中を覗き見る……

そこにはやっぱり背中にしがみつき眠る柚充の姿があった。



《柚充ちゃんだって
 いつまでも子どもじゃ無いんですから!!》



しのぶの言葉が頭をよぎる。
思い出してしまえば、色々な事が気になってしまう……


ーー胡蝶に殺される………


「……おい、、離せ、、」
「…んー。やー」

ーー"やー"っておい、、

「…… 柚充。離すんだ」
「…むー……」
不満そうな声と共に手が緩んだ。
その隙に布団を抜け出し、部屋の隅に移動すると壁に寄りかかって眠りについた。その時、次宿に泊まる時は必ず別の部屋を用意すると心に誓った。




ーーーーーー


「……実弥様?どうしてこんな所で寝てるんですか?
 ふかふか布団があったのに!もったいない!!」

ーーどうしてとお前が言うか?

「……追い剥ぎに合いそうだったからだ、、」

「…追い剥ぎ?」
「ああ。」


犯人は全く覚えておりませんでした。
 




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