師弟任務4


実弥は舌打ちをした。
柚充とあの親子を人質に取られている以上、自分が動くことは完全にできなくなってしまった。柚充だけであれば、打ち伏して鬼へ突っ込んで行くこともできたかもしれない。
しかしそれでも、鬼が直接柚充に手にかけられる状態にあるかもしれないという仮定を払拭できていないので、最悪の選択肢である。
柚充に怪我をさせないよう刃をあしらい続けるも、実弥にはその突破口は見つかっていなかった。

再び柚充が斬りかかってくる。実弥は防ぎ、またこれまで通り動きを読んで刀を振る。しかし柚充は刀を振らなかった。実弥の刀は柚充の腕に傷をつけた。

「ーーーっ!」

柚充の腕に血が赤い線を引く。

しかしその顔は確かに笑っていた。


柚充の体は血が流れようとも関係なく刀を振るい実弥の元へ。刀が交わる音が鳴り続ける。
「実弥様、入隊前に隊士の間で私が何と呼ばれてたか
 知ってますか?」



「ーーーーーーーー
      信じてますからね」


『お姉さん、まだ仕留められないわけ?
 折角お兄さん動けないようにしてあげたのに』
「僕ちゃん?私、その人傷つける気ないので、
 余計なお世話ですよ。
 それより貴方の頸を落としたいです」
『操られててできるものならやって見たら良いよ』
「んーそこが難しいところなんですよね」

ーー"一人の力"では。ね。

「陸ノ型 黒風烟嵐!」
実弥は人質の少年を確認して、この戦いで初めて柚充に型の攻撃を繰り出す。
柚充は黒風烟嵐を刀で受けつつその風に吹き飛ばされながら、着地点と少年と鬼の位置関係を確認し目を閉じた。

『お兄さん!お姉さんにそんな攻撃して良いわけ?
お兄さんがお姉さん殺しちゃうんじゃないの?』
鬼はケタケタ笑う。

ーーよし。気づいていない。

刀を持ち替え、着地と共に体制を整え刀を振った。
その刃の先は少年の首に当たり、少年は包丁を手放しぐらりと前に倒れ、母親の引きつる声が聞こえた
「お母様、大丈夫。峰打ちで気絶させただけなので。
 起きるまでには片付けます。」


「左手二歩飛んで、伍ノ型!!」

柚充は実弥の指示通りに動く。
鬼は慌てて座っていた木から飛び降りた。

『何で!こっちにくるんだよ!!』

鬼は気付いた。柚充が目を閉じている事に。

人間は視界に頼っている。信じられない時、恐怖を感じている時、状況を少しでも収集し安心する為に目を見開く。
柚充は実弥に蹴り飛ばされ地面を転がった時に反射的に目を閉じた。その時自分の意思で動ける感覚を見つけた。
それを確かめるために目を閉じて鬼にバレないように実弥が振った刀に加減して切られにいったのだ。



私、"鬼程恐ろしい風柱の式神"ですって。
 さっき蹴り飛ばされた時に気づいたんです。
 目を閉じていれば、体を操れない。だから

   実弥様が私を鬼の頸へ導いて。

 信じてますからね。
 




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