鶴梅


実弥は屋敷に着くなり直ぐにお館様に目通りを願い出た。隠の言う通り話は通っていたようで、あまり待つ事なく目通りが叶う。

「お館様。柚充が隠の里へ行きました。
 その事について説明してください」
「柚充がそう言ったんだね。分かったよ」



ーーーーーー

柚充が隊士に発見され、隠に保護されたのは5歳の時。あちこち傷だらけで、感情を見せなくなっていた。
そんな柚充の怪我を治療し、娘のように慈しみ、感情を一年程で取り戻すにいたったのは、鶴梅という隠の功だった。
鶴梅は、家族を鬼に殺され鬼殺隊を目指したものの同期が目の前で殺された事により、鬼への恐怖に負けてしまい鬼殺隊士として任務をする事ができなくなってしまった。できる事なら自分も刀を手に鬼を討ちたいとも思いながらも隠として鬼と戦う隊士の後方支援の道を選んだ。

柚充は鶴梅を慕い、"共に過ごしたい"とただそれだけの純粋な理由で隠の訓練をする鶴梅を追いかけ続けた。そんな簡単な事ではないはずなのだが、柚充はそれをし続けた。

柚充が8歳の頃"初心を忘れないために"と、とある隠が手元に置いていた"変わらなかった日輪刀"が柚充の手によってその色を変えてしまった。
そしてそれを知った隠の人々は自分ができなかった鬼殺隊で鬼を斬るという夢を鶴梅の訓練を追い続ける柚充を通して見い出してしまった。

しかし鶴梅は違った。
彼女は自分に出来なかったからといって柚充を鬼殺隊に入れようと言う気は全くなく、反対に「刀を取るだけが選択肢ではない。己を活かす方法を見つけなさい。鬼と関係のないところで生きてほしい」と言い続けた。
後方支援とはいえ隠になれば巻き込まれる事も無いわけではない。そして命をかけて戦う鬼殺隊の大変さは痛いほど知っていたから、すでに感情を欠落させるような苦しみを味わった柚充にそんな未来を用意してはいけないと思っていたのだ。普通の暖かな生活をさせてあげたかった。



鬼への執着が歪な形へと変化してしまい、一部の隠には鶴梅の存在がだんだんと良くないものへと変わっていった。


柚充は鬼殺隊士になれるのに。
鶴梅が居なければ……


柚充がまもなく10を数える歳になろうとしていたある日、事件は起きてしまった。
里に鬼の侵入を許してしまったのだ。



はたまた誰かが迎え入れたのか……


運命の歯車が狂いだしていた。
 




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