鶴梅2
「鬼だ!鬼が侵入したぞ!!」
「早く隊士に鴉を飛ばせ!」
「怪我人はいるか!」
「いいから避難しろ!!」
普段後方支援で働いている隠であっても、里に鬼が入り込む事など想定しておらず、あちこちで混乱した声が上がっていた。
柚充は鶴梅から引き離され「鶴梅を助けられるのは柚充しかいない」と日輪刀を握らせられ、寄ってたかって焚き付けられた。
子ども心に柚充は鶴梅を守る為ならばと決心をする。
しかし、鬼との戦い方はおろか、刀の扱い方ですら知らない。けれど鶴梅の訓練を追い回していた為その動きだけは軽かった。
しかし鬼の爪が柚充へと向かう。
その爪は柚充を庇いに飛び出した鶴梅の背を切り裂いた。
柚充は血を流す母を見て鬼への憎しみが湧き上がってきた。それはドロドロと心を蝕む。
ぷつんと何が切れた
自分が傷付くことなど何も構わず鬼へ向かっていく、何度も蹴散らされ地面に転がっても立ち上がり向かっていく。
焚き付けた隠たちはその姿が逆に恐ろしく見え、信じられないものを見る目で柚充を眺めていた。
ーーーーーー
鴉に呼ばれた冨岡は目を疑った。
戦い方も知らない様子の子が鬼へ向かい、隠が立ち尽くしている。異様な光景だった。
「水の呼吸 肆ノ型 打ち潮」
柚充の目に水飛沫が見えた気がした。
鬼が霧散していく。
鬼を斬った冨岡の姿を一目見ると、持っていた日輪刀を投げ捨てて鶴梅の元へ走っていった。母様!母様と声を上げる。
柚充の傷口から血液が滴り、その血が鶴梅の傷口へと落ちた。
冨岡にはそう見えた。その瞬間、鶴梅が苦しみ出し、柚充を遠ざけようと鶴梅は冨岡のいる方へ突き飛ばした。
「柚充……お逃げなさい…、、」
冨岡は柚充を背に庇う。しかし柚充は母を求めて手を伸ばし続けた。鶴梅の顔を柚充と冨岡が捉えた。
その顔は右目とその周りが鬼へと変わっていた。両の爪は鋭く伸び、涎がつーと跡を残していく。柚充は目を見開いた。
「……母様」
わなわなと身体が震える。
「柚充…ごめんね、、」
鶴梅はそう言い残すなり、懐から小さな小瓶を取り出し、躊躇う事なく中身を喉へ流し込んだ。そしてそのまま動かなくなった。
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