鶴梅3
へたりと地面に座り込んでしまった柚充を残し、冨岡は鶴梅の状態確認に近づいていく。
柚充は鶴梅が口にしたものの正体を知っていた。
冨岡は鶴梅を確認後、柚充の側へ戻る。
「あの者は何を飲んだ?」
「……毒を。飲み干してしまったから助かりません」
「………死んでいない」
その言葉を理解できた途端に柚充は顔を上げ鶴梅に駆け寄ろうとしたが、それは冨岡によって阻まれた。
「お前は何者だ?」
柚充にはその言葉の意味が分からなかった。
何故そんな事を聞かれるのか。
そして、己が何者か自分自身が知らなかった。
「お前の血があの女に落ちた途端に鬼化した
少なくとも俺にはそう見えた。」
柚充の目が絶望の色を宿す。
冨岡はその姿を見て、少女(柚充)は何も知らないと悟った。
再び鶴梅へ歩み寄ると日輪刀を抜いた。
「何をするの……」
「……鬼は討たねばならない。
コイツは睡眠状態であってまだ死んでない」
「ダメ!やめて!母様を殺さないで!
だって、母様だった!私の身を案じてくれてた!」
涙も鼻水も流れて柚充の顔はぐぢゃぐぢゃだ。
「この女が目覚めた時。本当に母だと言えるのか?
他の人には危害を及ぼす事はないと言い切れるのか?!」
柚充は押し黙る。冨岡は子どもにこんな事を問うのは酷な事だと十分に分かっている。しかし今までも嫌と言うほど悲惨な結末を目にしてきたのだ。その経験が彼を非情にさせる。
答えをまっている暇もない。
今目覚めてしまえば、一番危険なのは目の前の少女である。鬼は人間だった時に最も身近な存在から襲う傾向がある。
冨岡は恨まれるのを覚悟して鶴梅に日輪刀を振り下ろした。
しかし、鶴梅の体に刃が通ることは無かった。
何故か鶴梅の体は日輪刀を弾き返したのだ。手で触れると人間と同じ弾力があるのに、刃は一切鶴梅を傷つける事ができなかった。
「……やめてください」
「お前に何ができる?
そもそもお前に原因があるのではないのか?」
「そ、それは……分かりません」
「、、日輪刀で断つことできない以上、
お館様に指示を仰ぐしかない。」
柚充が日輪刀を握っていた事を説明できない冨岡は事の詳細を知る者を産屋敷へ向かわせた。
柚充と鶴梅はお館からのお達しがあるまで冨岡預かりとなった。というか監視である。
柚充の傷は全て手当を受け包帯だらけの痛々しい姿となっていた。
ページ: