煉獄4
ーーああ。これは夢だ。
ほわほわと真っ暗な空間に浮かんでいる。
自分が光を発しているのか、自分の体ははっきり認識できた。
血に濡れた煉獄の姿が脳内再生され涙が溢れそうになる。
もう考えるのが辛くて、いっそこのまま何も気にせず浮かんでいられたら良いのにとまで思ってしまう。
柚充の前に小さな光が飛んできた。それはまるで蛍のように、体のまわりを周り目の前で止まった。
その美しさに思わず手が伸び柚充の手はその光にちょんと触れた。弾け飛ぶ様に散り散りになったかと思うと、光は着物を着た女性へと姿をかえた。
キリッと意思の強そうな目。その目に柔らかさが灯る。
ーー綺麗な人だけど、誰だろう?
《杏寿郎の、、息子の為に涙を流してくれてありがとう》
「れっ!煉獄様のお母様?!
えっと、あ、たしか、瑠火様!」
最初こそ驚いだが、何故かすぐに納得できてしまった。間違いがないと瑠火が頷く。
「……ごめんなさい。私、何もできなかった。
上弦の鬼が来ると知る事ができていたのに
伝える事もできず、鬼の頸を落とす事も、
煉獄様を生かす事も出来なかった……」
《あの子は何が来ると分かっても、
結果は変わらなかったと思うわ》
「あっ!わ、私は、
煉獄様が退却するとかそういうつもりじゃなくて、何か
少しでも備えられる事があったんじゃないかとか……
思っ、、て……」
ーー本当にそう?勝てると信じていた?
自ら己に問う。
「………多分嘘です。
上弦の鬼がどれだけ強いのかを私は知らない。
今までだって柱が殺されてしまっていて、
煉獄様が戦っていると分かった時、
もしもを考えずにはいられなかった。
だって!私は煉獄様に生きていて欲しかった!
退却して生きられたなら
私はそれを選んで欲しかった!!知らない人より
煉獄様や仲間の無事を願ってしまった!!
鬼殺隊士なのにそんな事を考えてしまった…」
煉獄の強さを信じていたつもりで、信じきる事が出来ていなかった自分に嫌気がさす。
《身近な人ほど大切にしたい、無事でいてほしい。
そう思うことは普通のこと。恥じる事では無いわ。
それにあれが息子の運命であり、
責務であり使命だったのですよ
もしも悔やんでいると言うならば、
貴女も天から賜りし力で、
貴女の責務を全うされると良いわ
それだけで、杏寿郎は十分喜ぶわ》
「私の……責務、、」
《ええ。》
胸を張って生きろ!
心を燃やせ
脳内に再生される煉獄杏寿郎の姿に血に濡れた姿はもう存在しなかった。
少なくともあの場にいた炭治郎、伊之助、善逸、禰󠄀豆子、そして柚充の心の中で生きている。柚充の心にも火が灯る。まだ炎には程遠い小さな火。けれど必ず未来を照らす光になる。
もうほわほわと浮かんでいるだけの柚充では無いと瑠火は小さく安堵した。
《一つ頼み事をして良いかしら?》
《槇寿郎さん、、杏寿郎の父に
あの子は立派でしたよと伝えてください。
残された千寿郎の事くれぐれもよろしくお願いします
それとーーーー》
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