無理の代償


「これは、、少し縫わないと、、」


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鴉ひかたに呼ばれ、実弥が向かった先は煉獄家。辿り着いた時既に柚充の足首の包帯が真っ赤に染まり、顔色が悪くなっていた。
実弥の顔を見て「ちょっと頑張り過ぎちゃいました」と苦々しく笑う。
最初から無理をしていたのは知っていた。それでも柚充が望んだことだから好きなようにさせたのだ。

不安そうな顔した千寿郎の視線の中、柚充を背負い蝶屋敷へ急いだ。


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「なんでこんな傷で無理させたんですか!」
胡蝶に返す言葉なんてなくて。

処置を躊躇う胡蝶を急かすと唇を噛んで彼女は言った。
「柚充ちゃんは痛み止めが効きにくいんですよ」
選別中から入院中も痛み止めを使い続けていた柚充の身体は痛み止めに対する耐性を持ってしまった。そう滅多にある事ではないが、柚充には起きてしまった。と。
実弥が柚充の身を案じて選別に行かせまいとした事が、巡り巡って柚充を苦しめることになってしまったのだ。


「恨み言なら全て俺が聞く。だから頼む。」


痛み止め=麻酔が効いていない中、処置は進む。
額には汗が浮かび、目は固く閉じられていたが涙が次々と流れ落ちていく、声を殺す為に手拭いを噛んでいた。何をしても良いからと柚充に差し出していた実弥の腕に爪が傷をつけ、食い込み、血が滲む。
手拭いを噛んでいても柚充の痛いと言う声は聞こえていた。
それでも長いような短い時間、柚充も実弥も耐え。そして眠りについた。


「随分とやられましたね」
刀傷と違い抉られるような爪痕に胡蝶は眉を顰めた。
「こんなんかすり傷だ。
 ……悪かったな。胸糞悪りぃ事させて」
「辛かったのはお互い様でしょう?
 気をつけてあげて下さいね」

実弥はベッドに眠る柚充の顔を覗き込む。額の汗と、涙の跡を手拭いで拭う。

柚充の手を取った。
「ごめんな、、」

ーー代わってやれなくて。


そのままベッド横の椅子に座り眠りについた。



ーーーーーー

「柚充ちゃん!足大丈夫?」
「無理しすぎちゃっただけだから。
 もう大丈夫だよ。善逸。」
「でも昨日、凄く痛そうな苦しそうな声が聞こえて、
 俺、凄く怖くて、、」
「、、声?…え?なんで?……だって!」
「あー俺、凄く耳が良くってさ。
 聞こえちゃったって言うか、、」

凄く気まずそうに話す善逸が逆に不憫に思えた。

「、、そっか。あの、、ごめんね。
 怖い思いさせちゃって。でももう大丈夫だよ」
善逸に笑ってみせる。
「そうじゃなくて!!あの(無限列車)後、
 伊之助は抜け殻の柚充ちゃん抱えて消えるし、
 戻ってきても置いてきたってだけで
 元気が戻ったかどうか言わないし、
 炭治郎は蝶屋敷抜け出すし、、
 俺、訳わかんなかったんだから!!
 凄く心配したんだよ!!」

「おいコラ!タンポポ頭、
 誰の許可でここにいるんだァ?アァ?」

ヒーーーッ
病室に現れた実弥の顔を見るなり善逸は、青ざめた顔で「ごめんなさぁーい」と病室の窓から逃げていった。

「実弥様、威嚇しないで下さいよ」
「お前はもう少し警戒しろ」

なんで?と警戒心を持つなど少しも思わず柚充は首を傾げる。
ベッド脇に実弥が座ると、嫌でも腕の包帯に目がいってしまった。

「それ、、ごめんなさい」
「何してもいいって言っただろ」
「……でもっ!」
「それより、、」



「お前、何か忘れてねぇか?」

突然投げかけられた問いに、腕の話は打ち切りだと暗に示された。

ーー忘れている事……実弥様と離れた時、、

  ああ。そうか、、


「ただいま戻りました。実弥様」

満足したのか、実弥は柚充の頭をぽんぽんと撫でた。
 




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