油とマッチ


「実弥様!大変です!私の隊服が変なんです!」


足の手術から1週間も経たずに補助的に松葉杖は使っているものの歩けるようになり、不死川邸へ戻ってきていた。
呼吸で回復を促していた効果でもある。

そこに、療養中で任務に出られないからちょうど良いと、連日の任務で綻びが目立つ様になった隊服を縫製係へと送り、代わりの新たな隊服がとどいた。
新しいと言うだけでワクワクしてしまう。
しかし、柚充はそれを見て固まってしまった。


ーーこれでは肩が思いっきり出る……。

  何故…?


そして冒頭へ

実弥は一目見て誰の仕業か検討がついた。
隊服を包む風呂敷を肩に担ぎ、柚充と共にアイツのところへ向かう。

アイツは手を出してはいけない子に手を出してしまったのだ。

アイツこと、鬼殺隊縫製担当前田まさお

実弥は柚充に前田の居場所を伝えると、部屋の外で待つと壁に寄りかかった。



「ああ、柚充さん!新しい隊服はどうでしたか?」
「いや、どうって、、、
 これ肩がすっごい出るんですけど、、、
 縫製ミスとか、、。」

前田の大きなメガネがきらりと光る
「何を言うんですか!!ミスなどありません!
 柚充さんはまだ胸がないけど首肩ラインが
 とても良いから出さないとも勿体無い!!」

柚充の顔が真っ赤に染まる

「それにいつも羽織を羽織っておられるから、
 たまに見えるうなじ!!
 これはもう最高の武器になります!
 胸もこれから育つ見込みもありますし。
 これが!これこそが胸がない柚充さんに
 ピッタリな隊服なんだーー!!」

その瞬間、前に蝶屋敷の庭でしのぶが焚き火をしていた光景を思い出した。たしか、そうだ《油とマッチが必要な時はいつでもいらして下さい》そう青筋立てた顔で笑っていた。

拳を振り上げ熱弁を振るう程の情熱を持って仕事をしているのは素晴らしい事なのかもしれない。が、前田まさおは一番気にしなければいけない事を見落としていた。


柚充の後ろで不死川実弥が聞いていたことに。

柚充顔が満面の笑みに変わった。
おもむろに近くにあった二尺物差しを手に取り、一言「肆ノ型」と呟き一本を実弥に渡す。
振り返った顔からは笑顔が一切消えていた。
「油とマッチなんて生ぬるい、、、」


「肆ノ型 昇上砂塵嵐」
「肆ノ型 盛炎のうねり」


柚充の起こした炎が実弥の風に煽られて燃え上がっていく。どういう訳か前田まさおのゲス服コレクションだけが燃えてゆく。実弥は柚充が炎の型を使った事に驚き、現状と柚充を見比べていた。

「……胸がない、胸がないと……

 業火に焼かれて等しく灰に還るが良い!!」


前田は柚充の顔を見て凍りついた。


その後、彼は三日三晩うなされ続けたと言う。



因みにこれ以降柚充が炎の呼吸を使えた事は無く、隊服は初めて袖を通したモノと同じ形のものしか届かなくなった。

しかし今も前田は妄想を膨らませ、着られる見込みの無い柚充の隊服も密かに作り続けているらしい。
 




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