邂逅の先に2
「玄弥。お前は何故 柚充を目の敵にするのだ」
悲鳴嶼に抱き抱えられると柚充の身体の小ささが増したようにすら思える。
明らかに不満げな玄弥が柚充を睨みつけながら悲鳴嶼の後を追っていた。
「何故、悲鳴嶼さんまでコイツの事特別視するんですか。
俺は継子にしてもらう事は出来なかった。
そりゃあ全集中の呼吸が使えなかったからだって事は
分かってますよ。
じゃあコイツにはどれだけの才能が
あるっていうんですか」
玄弥の頭の中で、藤襲山での光景が再生されていく。
ーー呼吸が使えない自分でさえ大した怪我をせずに
7日間を生き抜いたというのに柚充はどうだ。
腕の骨を折り、足元がおぼつかない状態で
選別を終えたではないか。継子のくせに。
風柱の不死川実弥の継子のくせに。
通過後の説明だって意識が保たずにほとんど
聞いていない様子だったのも知っている。
「あんなまぐれで受かる様な奴が継子で居られるなんて
おかしいじゃないですか。
呼吸が使えるだけの弱え奴なんか
俺はぜってぇ認めない。」
明らかな敵意を込めて柚充を睨みつけている。
悲鳴嶼は一つ小さなため息をついて、静かに語り始めた。
「お前が言っている選別での柚充の怪我は
ほぼ風柱によるものだぞ」
「…………は?」
「風柱は実際に受けた選別の次の選別に合わせて
鍛練を進めていた。しかし柚充が栗花落と共に
受けたいと風柱に手合わせを求めたそうだ。
一撃でも掠る事ができれば選別に行くと」
それから、選別後、そして柚充が母を討たなければならなかったことなど、悲鳴嶼は知っている事を玄弥に伝えた。
その姿のどれもが玄弥が己の中で組み上げた柚充と全く異なるもので、どんどん罪悪感が膨らんでいく。
ーーーーーー
パチパチ爆ぜる焚き火を眺めながら、玄弥は己の行動を顧みていた。勝手に勘違いをして嫉妬して、妬んで、拒絶して、、、
焚き火の向こう側に少し顔色の悪い柚充が見える。よく見るとその手は女の子に似つかわしくない刀を握るものの手であった。
自分の愚かさに気づいた。
そして反対に興味が湧いてくる。
いや、本当はとっくの昔に興味はあった。ただ知る事が怖かっただけ。
知らなければ相手を悪と立ち位置を決めて振る舞う事ができるから。
逃げている事に目を逸らす事ができるから。
悲鳴嶼へ視線を向けると、悲鳴嶼は静かに手を合わせ瞑想をしていた。
玄弥も悲鳴嶼を習い瞑想を始めた。
柚充の目覚めはもう少し先。
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