邂逅の先に3


暗い、暗い闇の中、、、。
声が木霊する。

《お前が嫌いだ》

聞きたく無くて頭を抱える様に耳を塞ぐ。
しかしその声は止まない。

そして気づいてしまった。自分を見つめる二つの目。

ーーあの目は、、

《お前が嫌いだ》

ーー嫌だ。嫌わないで。

  どうして実弥様? そんな目で見ないで……


涙が一筋流れ落ちた。

ーーーーーー

「………焚き火?」
「…目が覚めたか?」
「悲鳴嶼様、、ここは、、」
「幾つか話さねばならないことがあってな」

差し出された竹の器を受け取り、中の水を一口飲むと、少し心のモヤモヤが小さくなった気がした。
ふと視界の端にもう一人の姿を捉える。その姿を認識すると突然手の力が入らなくなり、器が地面に引き寄せられていった。器の水が飛び散るのが早いか、柚充が動いたのが早かったか、、柚充は悲鳴嶼の影に隠れるように、もう一人の人物である玄弥から距離を取っていた。

「そんなに邪険にしなくても、
 玄弥は柚充を取って食ったりしないぞ、、」
「……玄弥?」
「玄弥。お前もこの娘に
 言わなければならない事が有るだろう?」
「悲鳴嶼様。……良いんです。
 …この方が私を嫌っている事はもう知っています。
 だから、、」

「……悪かった」
「…………」

「何の苦労もせずに兄貴の所にいるお前が許せなかった。
 俺は悩んで苦しんでいたのに笑いながら
 兄貴の隣歩いてるのを見た時、
 憎くて、憎くて仕方なくて、勝手に恨んで、
 手を差し出されたのに振り払った。その事が
 ここまでお前を苦しめるなんて思ってもいなかった、、」
「悲鳴嶼様?……」
「柚充。こやつは不死川玄弥。
 風柱、不死川実弥の弟」

「……??実弥様の弟……」

バラバラに散らかっている処理しきれなかった物事が綺麗に繋がり纏まっていく。
玄弥の目が実弥の目とかぶる事で、泥沼にはまっていたとやっと理解できた。

ーー良かった。あれは実弥様じゃない。
「っ!!」

安堵のあと柚充に込み上げてきたのは怒り。
体格差など何の恐れにもならない。柚充は玄弥の胸ぐらを掴み睨みつけた。その真っ直ぐな瞳に今度は玄弥の瞳の奥が揺らぐ。

「実弥様に人殺しっていった事、どう思ってるんだ!!
 答えろ!!
 返答次第では今度は私が貴方を許さない!!!」

「俺はっ!!」
すんなりとは続く言葉は出ず、口がからまわった。
「お……俺は、あ、兄貴に"あの時"の事謝りたいんだ……
 今度は俺が兄ちゃんを守って…
 俺を……認めて貰いてーんだよ、、」
玄弥の目から涙が線を引く。

柚充の手が離れていく。
自分自身も実弥に人殺しと言った弟に対して"悪"と決めつけていたのだと気付かされた。


ーーそっか、、なーんだ。

  2人とも分かってるんじゃん


少し嬉しくなって頬が緩む。

「分かったよ。
 玄弥。会って早々《大嫌いだ》って言ったこと、
 薬踏みつけて行ったこと。許してあげる。私あの後、
 しのぶ様に薬の件で罰まで受けたけど許してあげる!」
「それ、根に持ってる言い方だよな、、」
「持ってるよ?」

「だから、ちゃんと自分の力で実弥様と仲直りしてよね。
 私はこの件に関しては手を貸したりしないから」

「なんだそりゃ…
 まぁ、手を貸してもらおうとは思ってねぇけど…。」

柚充は笑った。その顔は本当は何も根に持ってなどいない柔らかな笑顔だった。
 




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