迷子
嫌な夢を見た。
夢は記憶の整理をする為に見るモノだと言う。
もう嫌と言うほど見た夢なのに、
まだそれを見ると言う事は、桜の中で詠の死は整理しきれていない事柄という事なのだろうか。
体力を回復する為に眠った筈なのに、逆に体力を奪われた気すらする。
ーーもうあっちは見なくなったのに、、
鬼に襲われた10歳の記憶は戻っても、最初こそそれは何度も夢に見たが、直ぐにその回数は減って、もう何年も見ていない。
そのせいか、今、鬼の元に自分が居るという現実を前にしても、記憶の姿は朧げで、鬼から助けられているという事実の方が鮮明に写ってしまう。
だから、心の何処かで親の仇であると意識しなければ、
優しさを向けてくる鬼達に流されてしまいそうになってしまうのだ。
ーーわたしは親不孝者なのかも知れない
気怠いながらも立ち上がると、外を目指して歩き始める。
意外と廊下にも日の光が差し込み、なぜこんな所を住処(すみか)にしているのか不思議に思ってしまう。
ひたひたと桜は足を運ぶ。
『何処へ行くんじゃ?』
「何処かへ行ってしまえないかと、、」
『儂らと共にあるのは嫌か?』
「、、それは、、分からないんです」
『意外な事じゃ、嫌と言うとばかり思っておった。
分からぬなら分かるまでは居れば良い
儂らは桜を傷つけるつもりはない故。』
「おかしくはないですか?
まるであなた方の心を踏み躙っているようです」
『心とな…。面白い事を言いよる。
、、桜は儂らが嫌いか?』
「あなた方は不思議と優しいです。きっと私より。
でも、その優しさに応えたい私と、
受け入れたくないと思う私がいます。
醜い心は私の方かも知れません。」
正直どうしたらいいのか分からない。
『まるで迷子じゃな』
「、、、上手い事を言いますね。
、、ええ。何処へ向かえば良いのか、
体も心も迷子、、ですね」
『、、その先をもう暫く行けば、
外へ出られらる窓が有る。
儂らはしばらく外には出られぬ』
「私を逃すんですか?」
『どうするのかは桜が決める事じゃ。
儂は桜に嫌われたくは無いからの。』
『ただ、桜は儂らのもので、
大切にしたいと、それだけは本物じゃ』
感情を口にしないその声色は桜には誰なのか窺い知る事が出来なかったが、ただ"分かって欲しい"とその思いだけが痛いほどに訴えかけてくるようだった。
「、ありがとう、、ございます。」
どの様に受け取れば良いのか分からないまま
桜は廊下を先へと進んでいった。
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