鬼殺隊3


「やっぱり桜さん、、!!」

ハキハキとした喋り方には覚えがある。
蝶屋敷の買い出し周期から外れていた為、
会うことは無いと思っていたのに、まさかの遭遇だった。

「、、相変わらず大量の買い出しですね」
笑って見せると、アオイの表情がぐしゃりと歪む。
「心配したんですから!
 どうして蝶屋敷に顔を出してくれないんですか?!
 薬屋の主人に聞いても帰ってないって言うし、
 一体何処に居たんですか!」
真っ直ぐなアオイの目は少しだけ苦手だ。
昔のしのぶを思い出してしまう。
「ごめんなさい。
 足を痛めて、なかなか戻って来られなかったんですよ」

ーー嘘をついてごめんなさい、、

「もう大丈夫なんですよね?!
 また、蝶屋敷に手伝いに来てくれるんですよね?!
 なほたちも喜びます。
 あの子たちも心配していたんですよ?」
ーーまだ蝶屋敷が綺麗に見えるのは
  アオイとなほ、きよ、すみのおかげなんだろうな、、
  でも、もう居られない…。

首を振る桜に、アオイの体はこわばった。
抱える紙袋がぐしゃりと音を立てる。

「もう命がこぼれ落ちていく事に
 耐えられそうに無いんです。
 もう、限界なんです。
 鬼殺隊は優しくて、そして、、嘘つきですから」


二人の間を風が通り抜けていった。

「、、鬼は約束を守りましたか?」
アオイの声は震えていた。

「、、、わたし知ってるんです、、。
 音柱様としのぶ様が話していたの
 聞いちゃいましたから。
 、、お、鬼の方が嘘をつくじゃないですか!
 なにか脅されたりしてるんですよね?
 一緒にいる奴を殺すとか、
 だから逃げられなくて仕方なしにとかなんですよね?」
 
「私の身を案じてくれる人がいる事は幸せです。
 でも、これは私の意志なんです」
「だって、桜さん怖がってたじゃないですか!」

確かに宇髄から詠の手紙を受け取った時、鬼に狙われているかもしれないと聞かされ、それは恐怖でしかなかった。藤の匂い袋が昼間でも手放せなくて、蝶屋敷の仕事も出来ないくらいに塞ぎ込んで過ごしたと思う。

稀血の自分は18歳で死ぬ。
自分には未来がない。
そう思ったから。

「そうでしたね。
 あの頃は、鬼が怖かったです。

 でも、

 人が死ぬ方が怖くなってしまったんです。
 こぼれ落ちていく命が怖いんです…」

日が傾いている。
これ以上アオイに捕まっていたら、
彼女に危険が迫ってしまう、、、

「鬼だって死にます!
 鬼殺隊が鬼を討ちます!」

「ーーーーーー」
桜の唇がわずかに動く。
吹雪を思わせる呼吸音。

アオイは手に痛いほどの冷気を感じて
持っていた紙袋を落としてしまった。

「桜、、さん?」
「ごめんなさいね。
 もう行かなきゃ。
 夜がやってきますよ。
 アオイさんも帰らなきゃ。」

「、、、なんで!氷の呼吸、、
 桜さんは鬼殺隊士じゃないでしょう!?」
「、、向かないと詠さんも言ったから、、
 、、選別を受けなかっただけですよ。
 これも、詠さんの形見ですし。」

懐刀を収めつつアオイに背を向け進む。
人気のない山の方へと。

遠くで鐘の音が聞こえる。
本当に遅くなってしまったようだ。

ーーさよなら。
  優しくて嘘つきで、暖かくて残酷な

  鬼殺隊……。
 


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