懐刀(かいとう)


桜が約束通り戻ってきた事、そして私物を引き取ってきた事を、鬼達は表し方はそれぞれであるが嬉しく思っていた。
空喜は桜が戻ったのを見届けると、
『ちょいと出掛けてくる』と羽を広げ飛んで行った。

『これで桜は共に在れるんじゃろ』
後ろから戯れ付くように可楽が勢いよく抱き付くと、
桜の手から荷物が床へと落下し、包帯や、薬、
調薬用の小鉢などが顔を覗かせた。

『儂らには縁のない様な物ばかりじゃな』
落としたのは可楽のせいだというのに、彼は悪びれもなく
慌てる桜の肩越しから、呑気に感想を述べた。

不機嫌そうなため息を吐きつつ積怒は落ちた荷物に近寄ると、風呂敷包みごと拾い上げる。
『積怒、、荷物が溢れ落ちておる。
 無くなれば桜が哀しむ』
『だったら主が拾えば良かろう。
 文句を言う前に動け。腹立たしい!』
もう拾ってると言わんばかりの視線を向けて、風呂敷の隙間を広げろと無言の請求をする哀絶に積怒はフンッと鼻を鳴らす。

「…可楽さん離してもらえませんか?」
『あー。良い良い。面白いゆえ
 やらせておこうぞ』
カカッと笑い完全に他人事を決め込んでいた。
「、、そ、そういうわけには、、、」



『オイ、、桜。』

その一言はその場の空気を一瞬にして塗り換える。

いつも怒っている彼であったが、
その口調はいつもの怒りを含んだものとは違って
怒りが込められたもの。

桜は忘れかけていた、
彼等が鬼だという事を
改めて認識する。


『桜?』
反射的に震え出す体に可楽が支えるも、
崩れ落ちる様にぺたりと床へ座り込んだ。

積怒は桜に詰め寄ると、
間に入ろうとした可楽を突き飛ばす。

『コレの為に、昼間に出かけてきたのか?
 仇の筈の儂らといる事に順応し過ぎと思って居ったが、
 儂らの寝首でもかこうとおもったか?』

積怒の手には詠の形見である懐刀。

「ち、、違います、、」
『何が違う事がある?白々しく腹立たしい。
 鬼殺隊(奴ら)が使う刀と同じものではないか。』
積怒は桜の前に片膝をつくと、目の前で抜き去り白い頭身に指を滑らせた。
懐刀の刃先に積怒の血が色を残す。
『儂らが憎いなぁ桜?
 ほれ、これで鬼が斬れるのであろう?』
力無い桜の手に、懐刀を握らせるとその手の上から積怒は懐刀の柄を握った。

導くその刃先は、積怒の首元。

『鬼は頸を落とせば死ぬのじゃろう?
 やってみれば良かろうが』
「、、嫌、です、、」
後ずさろうと身を捩るも、積怒が逃がす事はなく、
桜の体は上向きに倒れ、積怒が馬乗りにその体を留め置く

『積怒!やり過ぎじゃ!!』
『泣かせるのは良くない、、』
『黙って居れ!!腹立たしい!
 コレを持ち込んだという事は遅かれ早かれ
 儂らを斬るつもりじゃろうが!!

 殺せるものなら、殺してみるが良かろう』

懐刀を握らせている、積怒の手に力がこもった…
 


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