鬼殺隊4
『のぅ。あやつ鬼狩りなんじゃろ?
追われては厄介じゃろ?』
「やめて下さい。
彼女は隊服を着ていても任務に出られない子です
、、追われることはありません」
『人間を前にしてお預けを喰らう日が
くるとは思っておらなんだ』
口をへの字にして不平不満を表す可楽ではあったが、
その機嫌はすぐに元に戻りカカッと笑い声を上げた。
『なれど、桜が奴らを振り切って、
戻るとは、なかなか面白かったぞ』
差し出される手に手が重なる。
その手を突然引き寄せられると、足はついて来ずに
前に倒れそうになった。
なんとか桜は踏みとどまったものの可楽との距離は近い。
『いっそ転んで仕舞えば、
桜を抱きしめる口実になったものを。
残念じゃのぅ』
「、、、また、そう言うことを、、
揶揄(からか)わないで下さい、、」
『…まぁ良い。
桜に免じてあやつは喰わずに置いてやるわ。
儂は機嫌が良いからなっ!』
手に持つ扇が風を起こした。
ーーーーーー
しのぶは手に懐刀を乗せ、考えに耽っている。
それは同じ懐刀を持つ桜の事。
何日か前に回診と薬を届ける仕事を頼んだのだが、村を出て以降、彼女は行方不明となっている。
隠に行方を探す様に頼んだところ、道中で粉々になった薬箱が見つかった。しかし、桜自身の姿は見つからなかった。
ーー彼女も良い大人。
大丈夫よ。
なんども言い聞かせた言葉をもう一度繰り返した。
「しのぶ様、、ちょっとお時間良いですか?」
廊下から聞こえたのはアオイの声。
いつもは快活な彼女の声が今日はどこか暗い。
きっと"この後、任務で那田蜘蛛山に向かうのに…"と気が引けているのだろう。
しのぶはなるべく明るい声で返事をする
ーー姉さんならそうする筈だから。
おずおずと部屋へ入ってきたアオイは口を開こうとして、
その目の色を変えた。
「桜さん、いらしたんですか?!!」
「?、、えっと、それは、どうしてですか?」
「その、懐刀、、
桜さんが持ってたものと同じだったので、、」
「これは、師範、、森景さんの形見です。
あの人の日輪刀を2本の懐刀にしたうちの1本です。
………でも、どうして、それを、、」
「桜さんに、、会いました。
買い出しに出た先で、、」
「胡蝶。居るか?」
アオイの言葉に被る様に部屋の戸が開き、
じゃらっと額当てから下がる飾りが音を立てた。
「宇髄さん。
人を訪ねるときは
相手の返事を待って戸を開けるものです。
特に異性の元を訪ねる時はそうすべきです。
いくら既にお嫁さんがいらしても、
その辺りに気を配らないと、
直ぐに愛想を尽かされますよ」
「桜が間借りの部屋を出た。
薬屋の主人が荷物が無くなって
手紙だけ残ってたって言ってた」
「そんな、、何処へ行くって言うんですか?!」
数秒の間が空く。
頭の片隅に答えはあるのに、
口に出してしまえばそれが本当の答えになりそうで、
言葉にする事を躊躇っていた。
「……鬼。」
呟くアオイの言葉にしのぶと宇髄の視線は一気に集まり、アオイは二人に詰め寄られた。
「前にお二人が桜さんが狙われてるかもと
話していたのを聞いたんです。
でも…見つけた時、、桜さんは
鬼のところへ行くのは自分の意志だとも、、」
ガタンと音を立ててしのぶは立ち上がった。
そのまま部屋を出て行こうとして、宇髄がそれを静止する。
「胡蝶には指令が出てんだろ。
しかもお館様直々のやつが。
辺りは地味だろうが俺様が探す。
オイお前、桜と会ったところまで案内しやがれ」
3人揃って蝶屋敷を後にし、
しのぶは宇髄に想いを託して任務へと走り出す。
頭に浮かぶのは一緒に笑った何でもない日々。
よりによって今日任務が入っている事が歯痒くて、思わず爪を噛んでいた。
《あの頃は、鬼が怖かったです。
でも、
人が死ぬ方が怖くなってしまったんです》
アオイにはどうしても桜の言葉と複雑な表情が頭から離れなかった。
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