懐刀4
ーーお日様の力は偉大ですね。
最近の活動時間は夜がほとんどなため、昼間はぼーっとしてしまう。
木陰で居眠りをしながらも、桜は空喜と準備した果物や芋、薬草などを干している。
出しっぱなしでも、いいと言えばいいのだが、野生の動物たちに持って行かれてはせっかく作業した甲斐がなくなってしまう。
最悪の場合、冬には街に買い物に出て食料を調達するでも良いのではあるが、また自分を知る人に会うのは、何かと面倒であるかもしれない。
日の傾きが変わり、影に入ってしまった食材をひなたへと移動し、再び木の根元に腰を下ろすと、お供にと持って出た本を開き文字を追う。
その本は色々な話が入った短編集。
【 愛し合うことさえ
許されないなら
きっと想いを残すことさえ
許されないんでしょう 】※
不思議と胸に刺さるその言葉、居眠りをしながら見ていたこの話はそういった恋愛の物語だったらしい。
全く物語が頭に入っていなかったという事は、やはり相当桜は眠かったらしい。もしも今が恋愛の物語の中であるならば、森で眠る主人公の元には素敵な男性が現れるのかもしれない。
ーー私は主人公では無いな…。
何せ乾物を作りながらの居眠りなど、舞台設定がもはや喜劇である。
どちらにせよ、最初から恋愛など、桜は求めていないので特に問題では無いのであるが。
それだから、四鬼達が何故こんなにも大切にしてくれるのか不思議だった。
稀血とはそれだけ価値のあるものだというのだろうか。
育てて可食部を多くして喰らうとか、そういう事なのだろうと結論づけていた。しかし、もう成長期は終わったはずである、、
8年前より伸びた背、膨らんだ胸、、幼さを無くした顔。
ーーならば彼らは何を私に望んでいると言うのだろう…?
考えに耽っていたが、何度目か分からない眠気が訪れる。
大きなあくびを袖口で隠して、光の方へ目をやる。
人は目から入る光で、目が覚めるらしい。
根拠があるのか無いのか聞き齧りの知識で、上を見上げると、木の葉が光の中で揺れている。
眩しくて薄めた目はもう一度開くにはあまりにもおもく、そのまま眠りへと桜を手招く。
ーー大丈夫。少しくらい寝ても、
作っている乾物は影に隠れない。
なら少しだけ、夢の中へ
足の上から本がずり落ちて行った。
ーーーーーー
長い舌が振り子のように揺れている。
とても、とても、甘い匂い。
涎が溢れて仕方がない。
"それ"はただ匂いを追って足を運ぶ。
"それ"はもちろん人では無い。
鬼。
血走ったその目は木の根元で眠る人型を目に写した。
鬼は思う。
俺はとてもついている。
こんな山の中で美味そうな人間を見つける事ができた。と。
鳥や猪じゃない。
久しぶりのニンゲンの肉。
その足は速まる。
もしもここまできて逃げられでもしたら次はいつニンゲンの肉をくえるか…だから逃すわけには行かない。
『いただきま、、、
目覚めた桜の目に蛇のようなものがうねっているのがみえた。
※いう"どっと「アカトキツユ」歌詞
(「う」に濁点したかったのですが、
出来なかったので、上の仕様になっています)
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