甘いモノ


『何故じゃ…
 何故哀絶と桜が一緒に居る?』

空喜は元々桜に距離を置かれて居なかった。
しかし、一緒に巻き込まれた筈の哀絶がいつの間にか桜の隣へ戻っている事に可楽は衝撃を受けていた。

ーー抜け駆けしおったな、、、
  これは何としても、
  積怒より先に桜と仲直りをせねば、、


しかしながら、どうすれば元通りに桜が笑いかけてくれるかなど分からない。いままでも、自分が桜を振り回していた自覚がある。
というより、"それ"しかない気もしてくる。
虫を捕まえて泣かせて、、悪戯して困らせて、、


ーー儂は、一体何をして居ったんじゃ、、、


かくして、桜との仲直り計画は進められていく事になるのだが、、それは始まる前から前途多難を呈していた。


ーーーーーー

『人間とは手のかかる生き物じゃ、
 寝ねばならぬ、食わねばならぬ、
 血を流してはならぬ、、
 哀しいほどに気にする事が多い。』
二日お日様に当てた乾物の出来を確認したり、一緒に干していた薬草を紐で括っていた桜が、哀絶の言葉に視線を向ける。
「、、手のかかるですか?
 確かに否定はできないかも知れませんが、
 寝るというのは心地よいものですし、
 美味しいものは幸せな気持ちになります。
 、、痛いのは嫌ですから、
 血は流す必要は無いわけですし、、」
なかなか構って貰えず紐に戯(じゃ)れ付いていた空喜が意気揚々と顔を上げた。
『ならば儂らは桜を喰らえば
 "幸せ"とやらを味わう事が出来るのか!!』
「、、そ、それは私には解りかねますが、、
 私って本当に美味しいんですか?
 、、って空喜さんっ!!
 絡まってるじゃ無いですか!!」
『うぬ。どうなって居るのか儂にも分からん』

作業の手を止めて空喜の救出を始めるが、
構って貰えて嬉しい空喜は解けた側から羽をばたつかせ、
また紐は絡まっていく。
『桜!!何故か今度はこっちが絡んだぞ!』
明らかに空喜の悪ふざけが始まっている事を察知して哀絶は不満な顔を浮かべる。
『のぅ、空喜。その紐、儂が解いてやろう。
 桜は先程から多忙に手を動かして居ったからのぅ。
 さぁ、どれを引けば良いか、、』
『あ、あ、哀絶??!
 その紐は、ち、違うのでは無いか?
 よく見よ、、明らかに関係のない紐じゃ!!
 それを引けば締まるっ!締まるー!
 堪忍してくりゃれーー!』
 
こうして悪戯鳥の捕獲が完了してしまった。

『桜を困らせるのは良くない、、』
助けようとした桜だったが、中座の作業を終わらせてからでないと珍しく哀絶が許してくれそうにない。
「すぐに片付けますから、少しだけ待ってて下さいね」
『、、もがもがー。う"う"ー。(桜ー。はよー。)』

困った笑いを浮かべつつ、ふと部屋を見渡すと
丁度、可楽が部屋を出ていくところだった。
懐刀の一件から今まで、積怒、可楽と話をしていない。
積怒はさておき、可楽とは話そうとして居たのだが、妙に間が合わない。

ーーあんな態度をとった事
  怒っているでしょうか、、

恥ずかしさのあまり、避けたのは桜。
積怒が詰め寄った時、庇おうとしてくれたのに。
何とかしなければ、、

むしろ何とかしたいと思う桜なのだった。


ーーーーーー

空喜救出の後、更に面倒事を起こそうとした彼は哀絶に憐れみの顔を向けられ何処かへと引き摺られて行ってしまった。

積怒は元々ここに来て居なかったため、皆出払い、昼間以外に一人で過ごすのは久しぶりのような気がする。

食べないと言われながらも、捕食者と被食者の不思議な関係は良好(?)な様だ。
桜にとっては詠が生きていた頃と同じくらい心が軽い気がする。

ーー、、距離が近くて恥ずかしくなる事は有るけれど、、

カサカサカサッ

「っ!!・・・虫・・?」

聞こえた。確かに、、、
よりによって1人の時に、、、

「、、どうしよう、、」

カサカサ音を立てるものと言えば、
思い浮かぶのは虫しか居ないもので……。


桜に何かが迫っていた。
 


-


ページ: