拗れた気持ち3


『桜!!』
「来ないでください!
 、、、来れるわけありませんよね、、。

 日の下では、焼かれて消えてしまいます。

 でも、もう心配する事ありません。
 私が居なくなれば、寝首をかこうと企む人は居ません。
 苛々は無くなります。
 私も醜い大嫌いから解放されます。」

ーーどうか、心穏やかに過ごせますように。
  怒りが積もり続けるという
  その名前から解放されますように。

影になっている別の廊下を通って積怒は桜を追ったが、追いつくことは叶わず、桜は窓枠に足を掛けて飛び降りてしまった。地面までは直ぐ。
パリパリッと足の下で落ち葉が鳴る。

秋風が桜の髪を揺らして遊ぶ。
その景色は美しいのに、方や腕に血の跡を、方や懐刀を握りしめ儚く笑う。

差し込む光ではない。
日の下で。

『桜!戻れ!
 戻れと言うのが分からんのか!』
「嫌です。、、、もう解放してください。
 嫌なんです。もう嫌いなんです。
 嫌い。嫌いなの。嫌。全てが嫌。
 嫌い!嫌い!嫌い!嫌い!嫌い!」

鬼が。詠が。しのぶが。鬼殺隊が。自分自身が、、、


モウ消エテシマイタイ

景色は白と黒2色に写っていた、、、



ガシッーー

抱きしめられたと思ったと同時に桜の体は宙に浮く。
突然の浮遊感に目を閉じると桜の体は小さく強張った。

ぬるりとした感触に手が震えて握っていた懐刀を手放していた。


浮遊感はなくなり、何かに背を預けられ、ひんやりとした地面の感触がやって来る。
鼻をつく匂いが記憶を呼び起こす。
詠を包む炎がその体を小さくしていったあの時を、、。
ーーそんな筈は無い。そんな筈は、、

目を開けて広がる積怒の姿。
腹の辺りに懐刀が刺さっているうえ、
あちこち火傷で皮膚がただれている、、。

「、、、積怒、、さ、ん?」

『桜に刺さるより良いと思ったが、
 桜まで血だらけじゃ、、』

そこは最初に積怒と二人で言葉を交わした木の下。
木の根元に座らせた桜を覆うように不機嫌そうな色の中にも申し訳なさそうな顔をした積怒の体がある。
葉を減らした木の陰は思ったよりも小さい。

「傷に、、火傷、、」

桜はやっと状況を理解した。
積怒が桜を抱き上げ日陰へと移動させたという事を。
日に焼かれる事も覚悟して、懐刀は桜に刺さるより良いと自分の体に刺さるようにして。

痛々しい火傷…
触れられる所が見つからないほどの。

ーーなんて事をさせてしまったの、、、

この火傷は自分が負わせてしまったと、震えが止まらない。

「ごめん、、な、さい…ごめんなさい……
 私がこんな事しなければ積怒さんが傷付かなかったし
 火傷も負わなかった、、
 日の下はいけないって分かってたのに」
『日の下に行けないと分かっててやったんじゃろうが、、
 策士、策に溺れる。というやつだ』

桜を積怒の腕は少し痛いくらいに抱き締める。

『桜。嫌いなど言うでない。
 儂のことは、まぁ腹は立つが我慢しよう。
 なれど、桜自身の事を醜いや、汚いと、
 蔑むような事は聞きとうない。
 儂も、他も桜の事を好いて居る。

 桜が桜を嫌うなら、
 儂らがそれを超えて愛しく思う
 じゃからもう嫌いなどと口にしてはならん。
 桜は綺麗じゃ。愛らしく、美しい。
 そうでなければ儂らは桜を既に喰ろうておる』

日の下に来れない。
来ないと思っていた。
それなのに積怒は来た。
その身を焼いても。
そんな事するはずがないそう思っていた。
何故?と思いたい。
でも、彼らはずっとその答えを告げ続けている。

愛しい、愛らしい、好き、欲しいと、、

それをもう分からないふりをする事はいけない。
見ないふりをする事は出来ない

「ごめんなさい、、
 もう日の下には行きません、、」
『流石にそれは出来ようもないじゃろ…
 揉めるような事があっても日の下に逃げるのは
 辞めじゃ。
 儂も話をせんで、避けるような真似は
 ……気をつけよう、、』

ーー向けられる優しさが今はとても苦しい、、
「、、はい。
 、、約束です、、」
 


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