もしも…


蝶屋敷では賑やかな日々が送られていた。

那田蜘蛛山の一件からカナヲと同期の隊士三名が治療、及び機能回復訓練に滞在して居るのだった。

「しのぶ様お茶をお持ちしました」
部屋の外から声がして、盆を持ったアオイがしのぶの元へとやって来た。
アオイはよく気を回してくれる。彼女が居なくなったら蝶屋敷(ここ)はてんやわんやすることだろう。
「竈門君たちの回復訓練はどうですか?」
「どうもこうもありませんよ。
 炭治郎さんしか訓練に参加していませんし、
 その炭治郎さんもやっと私との薬湯の訓練に
 ついて来れるかどうかという程度です。」
「一人で?彼は頑張り屋さんですね。
 やはり、目標有る無しの違いでしょうか?」

「目標、、、

 ……しのぶ様は、鬼を人間に戻す事は
 可能だと思いますか?」

「・・・・・・・・・」

「炭治郎さんは妹さんを人間に戻す為に
 鬼殺隊になったのでしょう?

 その、、
 それが可能なら桜さんだって
 戻って来られる、、、じゃないですか、、」
アオイの思いつきにしのぶは目を丸くする。
それが出来るなら、理想的な話に聞こえるのかも知れない。
それでも、立ち止まって考えなければならないことがある。
「……可能かどうかは、、分かりません。…でも、
 本当にそれを私たちは受け入れられるのでしょうか?
 竈門君の妹は人を食べていない。
 だから、人間に戻っても受入れられるとは思います。
 でも、桜と一緒の鬼は?
 森景さんの話が間違いないのであれば、その鬼は
 桜の家族を殺しています。桜が良ければそれで良い。
 そんなのは綺麗事です。
 彼女の家族以外にもきっと殺された人はいるでしょう。
 ……その人達の悲しみは、何処へ向ければ良いか、、
 、、それはとても難しい問題です。」

ーーそもそも、本当に桜は生きている?
  稀血のあの子が鬼に喰われずに生きていられる?
  生きていると信じたい。
  もう一度話したい。向き合いたい。
  桜には笑っていて欲しい、、


"元々は人間なのだから、
 鬼と人間は仲良くできれば良い"

そんな理想を持ち続けていた姉のカナエ。

ーーでも、、
  そんなもの叶いっこない、
  叶うんだったらとっくに世界には平和が訪れている。

  私にその理想は持つ事は出来ない…。


ーーーーーー

数日後

任務を終えて蝶屋敷に戻ったしのぶは屋根の上に炭治郎の姿を見つけた。
ーー彼はまだ一人、
  強くなることを諦めてはいないのか、、

妙に話をしたくなって、しのぶは炭治郎の居る屋根の上へと飛び上がった。
「もしもし」
「・・・・・・」
「もしもし、、」
「・・・・・・」
「もしもーし」
「ハイッ!?」
なかなか気付かない炭治郎との距離は近くなっており、しのぶに気づいた彼の頬は赤く染まった。
「頑張っていますね
 お友達二人は、どこかへ行ってしまったのに。
 一人で寂しくはないですか?」

少し離れた隣へちょこんと座ると、炭治郎の頬の赤みは引いていった。そして、自分ができるようになれば皆に教えられると真っ直ぐな目をして口にした。

それはとてもとても綺麗なモノに見えた。

「竈門くんは鬼を人間に戻す事は可能だと思いますか?」
「・・・・・たとえ不可能であっても、、
 俺は、禰󠄀豆子を人間に戻すと決めました。
 だから、今は方法が無くても探します。

 必ず。」

「では……人を喰った鬼が人間に戻っても、
 生きていく事が許されると思いますか?」

炭治郎は目を丸くた。
 


-


ページ: