もしも…2


「では……人を喰った鬼が人間に戻っても、
 生きていく事が許されると思いますか?
 人間として受け入れられる事は可能だと思いますか?」

炭治郎としては考えたことの無い質問だったのだろう。
「それは、、身近な人が鬼になったという事ですか?」
困ったような表情の炭治郎にしのぶは少しだけ申し訳ない様な気持ちになった。
炭治郎はずっと妹が人を喰ったらその場で妹を殺し、自害しろと言われ続けてきたらしい。そんな彼に聞くような話ではなかった。
忘れてくださいと言おうとして口を開いたとき、炭治郎の口から言葉が紡がれていた。

「俺は、、何度も禰󠄀豆子が人を喰う夢を見ました。
 その場で禰󠄀豆子の頸を落とさなきゃいけないのに、
 手が震えて、、刀を振ることが出来なくて、、
 結局頸が落とせないまま目が覚めるんです。

 目が覚めると、、うなされていたのか
 決まって禰󠄀豆子が手を握ってそばに居て、、

 "ああ頸を落とさなくてよかった"
 "夢で良かった"って思うんです。
 きっとそれはもし、禰󠄀豆子が人を喰ってしまって
 いても、生きていて欲しい。
 一緒にその罪も背負いたいという事
 なんだとおもいます。

 支離滅裂ですよね、、
 答えになってないですし、、」

頭を掻きながら笑う炭治郎にしのぶは桜を思い出していた。

「竈門君。君には私の夢を託されて欲しいです」
「夢?」
「鬼と仲良くする夢です。
 私にはどうしても出来そうにありません。
 最愛の姉を惨殺されて、
 一緒に育った半身の様な子は消息不明で、、」

もし、桜が鬼となって目の前に現れたらと考えた事もあった。"鬼は斬る"と思っていても、それが桜であるなら、その答えは見つからないのだけれど……
無意識に爪を噛んでいた。

「しのぶさん、、、怒ってますか?」

「・・・・・・・。

 そう…ですね、、。
 私はいつも怒っているかもしれない。

 鬼に対しても、
 自分の事ばかりで気持ちを汲んであげられなかった
 自分に対しても、、。

 手が届く内は気付けなくて、
 離れてしまってからひどく苦しくなる。
 あの子は姉と一緒で優しい子だったから
 私はその優しさに甘え過ぎてしまった。

 本当は分かっていたはずなのに、、、

 炭治郎君、頑張ってくださいね。
 どうか禰󠄀豆子さんを守り抜いてね。
 自分の代わりに君が頑張ってくれていると思うと
 私は安心する。気持ちが楽になる、、」

笑顔を作る事が出来なくて、しのぶは炭治郎に目を合わせる事なくその場を辞した。

"もしも"は色々並べられる。
あの日、回診を頼まなければ、、
那田蜘蛛山への任務が出ていなければ、、

自らに藤の毒を盛っていなければ、、
もっと桜の悲しみに寄り添っていれば、、

しかし、過ぎてしまった時間は、後悔以外何も与えてくれない。

森景を説得して、桜も鬼殺隊に入隊させていたら
鬼にも対抗できていたかもしれない、、


しのぶは頭を振って次々浮かぶ"もしも"を吹き飛ばす。
過去は考えても仕方ないのだ。

ーー考えるなら未来の"もしも"を考えなければ、、
  
その為にも

どうか生きていて下さい。
また会わせてください。
話をさせてください。
笑顔を見せてください。

神様がいるなら

どうか、、

どうか、、、。と。
 


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