蝶屋敷の記憶3


「私の育手はあなたなの?」
「そう。悲鳴嶼君から頼まれたからね
 氷の呼吸の、凍柱、森景詠」

「氷の呼吸なのに?氷柱(こおりばしら)じゃないの?
 悲鳴嶼さんは岩の呼吸で岩柱でしょう?」

「つらら、つららと呼ぶ奴がいたから凍柱にしたんだ。
 奴は未だにつららって呼んでくるけどな」
眉間によるシワは詠に珍しい。

さて、先ほどから詠は気の強そうな少女と言葉を交わしている。
彼女の名前は胡蝶しのぶ。
昨年岩柱となった悲鳴嶼行冥に助けられたのち、姉と共に悲鳴嶼に「鬼狩りになる方法をおしえて」と懇願したそうだ。

そして、姉妹別々に育手に託す事になったのだが、妹しのぶを託す筈だった育手の持病が悪化してアテが外れてしまった。
そんな相談を悲鳴嶼から受けた詠は二つ返事で引き受けたのだそうな。
「桜さん。この子は胡蝶しのぶさん。
 桜さんとは同い年かな」
「貴女も鬼狩りになる為にここに居るの?!」
突然に距離を詰めるしのぶに桜は驚いて後退ってしまった。
ここに来て程なく半年をむかえるが、距離感には敏感で、詠以外は慣れていない。
蝶屋敷の手伝いをする様になってはいたが、ほとんどが人と接することのない様な裏方仕事。

「しのぶさん、桜さんは鬼殺隊にはならないよ。
 怪我人の手当てとか治療の方を
 手伝ってくれているんだ。
 因みに今は声が出ないからそれだけは覚えていて」
少し不満そうに頬を膨らましたしのぶだったが、仕方ないと諦めたのか早々に興味を無くし、桜から視線は離れていった。


その日から少しずつ

桜は詠を遠く感じる

しのぶに詠を取られていくような、、、


しのぶは鬼殺隊に入る為の鍛錬だけで無く、怪我人の手当てなど、医者としての詠の手伝いもするようになっていた。彼女は手先も器用で、草木に詳しく薬の調合が、できてしまった。
快活な性格は患者の覚えも良く、桜にはそれが段々と辛いものに変わっていった。
 


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