其々の思い3


「……それでも、、
 私は、蝶屋敷(ここ)を選ぶ事は出来ません」
言葉を発した途端に、数秒の間どちらも動くことはなく、時間が止まったようだった。

「、、桜さん?、、何故ですか?
 鬼は人を食べるんですよ!
 貴女は稀血で、真っ先に狙われるんですよ?!」
「でも、私、生きてるんです。
 あちらに行って数ヶ月、、それでもこうして
 生きているんです」
「確かに、今回はそうかもしれません。
 それでもっ
「……なら
 しのぶさんは、どんな未来を一緒に見てくれますか?」

しのぶに返す言葉は見つからない。

「…私はもう、大切な人の死を見たくはありません。
 カナエさんの仇の鬼を倒すために藤の毒を
 取り込み続けるなんて、
 それだけ辛い思いをしているのに

 どうして
 未来に貴女が居ないんですか?
 だったら鬼なんて倒さなくて良い。
 炭治郎さんが探している鬼を人間に戻す薬を
 しのぶさんが作ってしまえば良い。
 鬼を人間に戻すという方法で、
 鬼という存在を消してしまえばいい。
 戦わなくて良い方法を探してください。
 しのぶさんが生きる道を探してください」
真っ直ぐに見つめる桜の目から逃げるようにしのぶの目は逸らされていく。
「……そんなの無理です…。
 姉さんと桜さんの願いは出来る事なら叶えたい。
 でも、、"鬼を人間に戻す"そんな方法
 聞いた事がありません。
 それに、そもそも、桜さんはなぜ
 大切な両親を殺した鬼を許せるんですか?
 両親だけじゃ無い。
 姉も、仲間も、沢山の人が死んだんです。
 人間に戻る?何も無かったかのように生きるの?
 そんなこと許せますか?
 人を喰ったんですよ?
 
 それが許されるというなら、
 私のこの気持ちはどこに向けろって言うんです?
 身を焼くようなこの痛みは、どうすれば良いのよ!!」

命の重さに違いはない。
それでも確実に人によってその命には違いがあって、それを同じく感じてあげる事はできないだろう。桜から目を逸らしたまま、しのぶは続けて口を開いた。
「…それに、私だって鬼に人に戻ってもらっては困ります」
「…。それは、どういう…」
しのぶの表情から笑顔は消え、酷く思い詰めたような、、そんな横顔をしていた。
 


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