疑問と答え4
「…私は鬼に助けられて望んでそこに留まっていた。
そして風邪を拗らせ蝶屋敷に戻された。
という前提の話です。」
「助け?お前の両親らの仇じゃねェのかァ」
「……それは、、確かではあります…」
座卓を挟んだ向こうで桜が不死川の視線からあからさまに逃げている。
ーー怖がらせても意味ねェか。
大きな溜息をつき、不死川は座卓に頬杖をついた。
「で?その前提で、どう蝶屋敷に戻りたくねェに
繋がんだァ?」
「…帰りたいんです。鬼さんの所に。
でも、昨日会った別な鬼さんに"藤臭い"って
言われたのです。
でも、鬼除けの匂い袋は持ってなかったですし
私には覚えがなかったのです」
「・・・・・・」
「知らず知らずのうちに引き離されて居たなんて…
私の気持ちなんて、どうでも良かったんですかね
選ぶ権利なんて無いって…
…だから、戻りたくなかったんです…」
「残念ながら俺に鬼にかける情けなんてモンはねェ
例えお前と一緒にいた鬼が目の前に現れれても、
躊躇う事なく頸を落とす。
でも、、」
言葉を切った不死川は少し言葉を選んでいる様に見えた。
「一つの考え方だと思って聞け」
鬼殺隊は死と隣り合わせで、鬼の頸さえ落とせば死んでも良いと思ってる奴もいる事は確かだ。
変な話、それはそいつが信念としてるものが達せられるのであれば悪い話じゃねェ。
けどな、そいつの意思とは関係なく、死んだら悲しむ奴がいる。
家族が他界してたって、共に戦った奴、飯を食った奴、助けられた奴がどっかに居んだ。
関わりを持った奴が死んだって聞くのは気持ちのいい話じゃねェ。
それに加えて俺や、お前は稀血。
稀血が鬼に喰われるって事は、それだけの力を鬼が持つってこった。
鬼殺隊としては何としてもくい止めたい話ってのは理解して欲しい。
お前を信じて背中を押してやりたい気持ちがない訳じゃない。でも、胡蝶の考えも分からねー訳じゃねェから、宇髄の様に好きにしろとも俺は言えねェ。
「結局はお前が決めるしかねェンだがな。
お前は良くも悪くも"鬼殺隊"じゃねェからな。
にしても、、
その、、悪りィ事だと思わねェが、
お前も昔を思えば、わがままになったもんだな」
「わがまま…」
「さっきも言ったが、悪りィ話じゃねェ。
守りてェ自分があんのは良い事だ。
でも、立場が変われば思いも変わるってことを
十分に知っておくべきだァ」
不死川が立ち上がり、背後の襖を開くと向こう側にアオイが立っていた。
ーーしのぶさんじゃないんですね、、
「俺が言えた義理じゃねェが、
話はするべきなんじゃねェの?」
そのままアオイの脇を通って不死川は部屋を出て行った。
反対にアオイはとぼとぼと室内に進むと、桜の前で膝を落とす。
「アオイさん?」
「……桜さんに幸せになって欲しい、、
それは確かなのに、嫌なんです。」
「……?嫌、、?」
「カナヲさんがしのぶさんを姉の様に慕っている。
同じ様に私は桜さんが姉の様だと思っていました
私は一緒にいる時間がしのぶさんとより
桜さんと一緒が長かったですから」
アオイは桜に笑顔を向ける。でもそれは苦しそうで、泣きそうで。"藤臭い"と言われる発端をアオイが知っていると疑いようもなかった。
藤の匂いの原因は桜が使うあらゆる水に藤の香液が落とされている事だった。
洗濯をする度に、湯浴みをする度に、そして香液の入った水で洗った衣服を纏う度に藤の匂いを知らないうちにかけ直す。
「だから、消えないものではありません…」
それはしのぶではなく、アオイによる不器用な引き留め方だった。
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