疑問と答え5
誰もが正しい選択なんてものを知らなくて、誰もが答えを探している。
正解なんてないそんな中からどうにか気持ちに折り合いを付けて…
本当は納得がいかなくても、
せめて傷つく人が少ない様にと
少しでも自分自身も後悔しない様にと。
当たり障りのない場所に妥協する。
それでも噛み合わないことは意外に多くて
せてめ大切な人が幸せであるようにと願いを込める。
なのに…
どうしてうまく行かないんでしょう?
どうしてすれ違ってしまうのでしょう?
でも気づいてしまったんです。
相手のことを思って居ても、どうしても譲れない
譲りたくないものが存在すると言うことに。
それが桜にとっては積怒、哀絶、空喜、可楽と巡る季節を過ごすこと。
「アオイさん、ごめんなさい。
私は、、もう、、
……蝶屋敷を出ます」
ーーーーーー
前日雨でぐちゃぐちゃに汚れてしまった着物は隠の手によって昼過ぎには綺麗になって桜の元へ戻って来た。どうやら不死川が手を回してくれたらしい。
もう着物からは藤の香りはしていない。
桜は不死川邸から蝶屋敷へ戻ると、滞在していた部屋を綺麗に纏め始めた。
纏めると言っても、着の身着のまま運び込まれた桜にこれといって荷物などないのだが…。
「桜さん、、」
アオイはそんな桜に気づいて表情に影を落とした。
「アオイさん。
私はね、やっぱりここには居られません。
だって、私。明るい未来が欲しいの。
だから鬼が人間に戻るための方法を探したい。
死ぬ為に生きるんじゃない。
喰われる為に行くんじゃない。
私として生きていくことに決めたのです。」
鬼殺隊を今は嫌いではない。
ただ鬼側に想う人が居た。ただそれだけの事。
鬼殺隊と言う組織に禰󠄀豆子という鬼がいるのの反対に、四鬼という存在に桜という人が招き入れられただけ。
そんな小さな例外。
「桜さんは怖くないんですか?!」
桜はアオイに笑いかける。
「怖いです。でもそれは、
自分の気持ちに気付けたのに
伝えることが出来ないことに対してです。」
欲しかった答えとは違かったからかアオイに笑顔は湧いてこなかった。
唇を結んで、去っていこうとするアオイの背を桜は後ろから抱き締めていた。
「姉の様だと言ってもらえたこと、
とても嬉しかったです。ありがとう」
アオイは小さく「ごめんなさい」と繰り返していた。
翌朝、桜は誰にも行方を告げないまま蝶屋敷を後にし、それから桜の行方は再び不明となる。
しかしアオイは以前の失踪とは違って、どこか安心していた。
桜は思いを持って行ったのだから
ただ幸せを掴むこと。それだけを願いたい。
そう青空を見上げて思うのだった。
ーーーーーー
桜は貸本屋を訪れていた。
太陽がまだ空にあるため、あの少年がここに居るとは思えない。それでも、きっとここに居れば見つけられる様な気がして足を運んだ。
「…植物辞典、、植物辞典、、」
ーーあれ?この本…
見覚えのある装丁の本は、以前鬼の少年が手にしていた本によく似ている。まじまじと見ることが出来なかったので、本当に同じ本を手にしているのかは定かではないが、この本で間違いないような気がしてくる。
軽々持っていた様に見えたのにその本はずっしりとした重みがあった。
前回借りずに貸本屋の主人に返した本と植物辞典を手に閲覧席に向かうと小さな文字を追い始める。
日が暮れるのを心待ちにして。
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