近くて遠い
『なぁーにぃー?この薄汚い野鼠は?』
ーー 一人じゃ…無い。
『堕姫は手厳しいねぇ。俺は好きだよ。
可愛い女の子じゃないか。
でもどうしてだろうねぇ?
無惨様が人間をここに落とすだなんて』
インクを頭から被った様な鬼が桜に向かって手を伸ばす。噴き上がる恐怖で逃げ出してしまいたいのに、動く事はできなかった。
更に虹色に光を乱反射しているように輝く目からも、目が離せない。
その手が触れる、、そう思った。
『手違いではありません。
それは無惨様が此方に通したのです』
『なーんだ。鳴女ちゃん。
最初からそう言ってくれれば良かったのに。
どうやって殺そうか考えちゃったじゃないか』
『どーでも良いがよぉ。
早く無惨様の考えを言えよなぁ。
じゃねぇと、腑(はらわた)煮えくり返った堕姫が
テメェの目ン玉ほじくり出しそうだからよぅ』
鬼の中に落とされた異分子である自分が発端の鬼達の会話だと分かっていても、軽々と血生臭い事を口にし、更には当の本人である桜を置いてきぼりにしていた。
『この娘に青い彼岸花を探させるそうです』
『ヒョヒョ。我らで見つけられぬものが
小娘に見付けられるとでも?』
『怖ろしい。怖ろしい。見付けられておらぬ事に
何の非も感じておらぬ言いぐさじゃ。
儂はそのすっからかんな玉壺の頭が怖ろしい』
ーー主様、、
桜は幾分心の余裕を取り戻す。
「……っ、、わ、私が、、」
『何、勝手に喋ってんのよ!殺されたい訳?』
一歩前に出ようとした堕姫の腕を隣にいた鬼が掴み静止する。
静止をかけた鬼の視線を追うと、いつのまにかインクを被った様な鬼は大きな扇を広げ口元を隠していた。堕姫が静止を受けたのを見てパチンと扇を閉じると、桜を見てニコリと笑ってみせる。
どうやら先を促されたらしい。
「私は、、私の理由で、青い彼岸花を探そうと
思っていて…、皆さんが言う無惨様と目的が
同じだったのです。」
『だから生かされた?君は植物に詳しい人間だとか
そう言う話なのかい?』
「……そういうわけではありません。ただ…
もしも、昼間にしか花開かないとしたら皆さんは
青い彼岸花を見付け出すことができますか?」
『…っふふ。痛いところをつくなぁ。
それは手厳しい話だね。』
芝居がかった動きで桜の周りをぐるりと周り、品定めするかの様にその姿を上から下まで眺めて再び笑う。
『俺は異論はないよ。女の子好きだし。
無惨様のご意志ならね』
皆が皆、両手を上げて歓迎とは行かないのは当たり前ではあったが、向けられていた殺気が和らいだ。
堕姫はフンっと桜に背を向ける
『話は終わりよね。
無惨様もいらっしゃらないし、私はもう戻るわ。
喰えもしない人間に興味はないのよ。
たとえそれが稀血であっても。
行きましょ。お兄ちゃん。』
『あらあら、機嫌が悪いなぁ』
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