巡る季節


想いを伝えてどんな変化があったでしょうか。たぶんそこまで大きな変化はなかったのだと思います。
もともと可楽さんは抱き締め癖と、、その…えっと、、口付け、、されますし、、。哀絶さんにも、可楽さん避けだと言いながらよく抱きつかれていましたし、……たまに、、可楽さんとはまた違った色気を醸しながら迫られることもありますが、、恥ずかしいことに変わりはなくても、可楽さんほど身の危険を感じる事はなく逆にあの困り顔にいつも負けてしまいます。
積怒さんは身の危険とは違いますが、不意打ちのように距離を詰めてくるものですから心臓に悪いです。ですが、、意外と純と言いますか、、見た目とかの話ではなく…えっと、、可愛らしく思えてくる事もあってですね……そこもある意味で心臓に悪いと思ってしまうのですが、そういうところも好きだなと密かに思っていたりします。
一番安心して居られるのは空喜さん。彼は今のところ手に口を寄せられた事はありますが、口付けを迫って来るという事がありませんし、恋愛初心者の私としては警戒せずに隣にいる事ができているのだと思います。
逆に先日私が、可楽さん、哀絶さん、空喜さんの頬に口付けをしてしまった時に一番あたふたしていたのが空喜さんだったので、私と同じで恋愛事には疎いのだと想います。その分無意識に振り撒く色気は破壊力が有りますが…。

鬼と人という間柄である私達にとっても、愛というものに幸せと思う事は多いですが、それと同じくらい悩ましいものでもあって、、触れたいとも、、触れてほしいとも、、その…思ってしまう事も嘘ではありません。
一層に愛しいが溢れてくるのは、幸せなことに他なりませんが、一つ叶えば、もう一つとだんだん欲深くなってしまう事も知りました。
月様に一度お小言を言われたらしく、このままでは織姫と牽牛になってしまうと空喜さんが青褪めた顔をして、他人事では無いのですが、思わず笑ってしまいました。


季節は巡り、春には一緒に夜桜見物を…と思いましたが、今も昔もさくらが咲けばその下には昼夜問わず人が集まり賑い、更にそれを狙った鬼も多くいるのだそうです。四鬼さん達に言わせれば『考えも無しに。鬼狩りに狩ってくれと言っているようなものじゃろうが』と言って居ましたので、鬼殺隊の方々も忙しくされているのでしょう。
という事で、四鬼さん達と夜桜見物に出かけて行く事はできませんでした。ですが、半分枯れてしまったあの木がさくらに似た花をつけました。さくらよりも色の濃い桃の花。

愛しい人達と見る今年の花見は今までで一番特別なものとなりました。

代わる代わる花が開いて枯れてを繰り返すその季節の中で、月様と約束の青い彼岸花を探すことに関しては、秋に咲くのではない可能性も考慮して、鳴女さんにあちこちに飛ばしてもらったりもしながら主に昼間、探し続けておりますが、なかなか出会う事はできないままです。

紫君子蘭も、夏水仙も彼岸花と共通点はあってもやはり違うもので、、咲く季節の違いという点は可能性が薄いと半ば諦めの気持ちが強くなっています。
一時期調べて居た"人間に戻す方法"については、その必要はなくなったため全てを火に焼べてしまいました。

夏が過ぎれば秋が来る。
私達が始まった実りの季節。

今年は昨年よりもきっと楽しいです。

少し先のその季節が
私はそう思えて仕方ないのです。

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『また雨かえ…。今年はいつになったら
 花火が上がるんじゃろうのう…
 羽も湿気(しけ)っぽくて喜ばしく無い…』
外を眺めていた空喜は体を投げ出してバタバタと床を転がる。その姿は駄菓子屋の店先で母親に菓子が欲しいと駄々をこねる子供のようでもあった。
「こんなにも花火を待ち遠しく思っている人が
 居ると知れば、花火師さんも嬉しいでしょうね」
ふふっ笑いながら空喜の隣に座る桜。
『人ではない故どうじゃろうのぅ。
 そうじゃ!!いっそ攫って打ち上げさせれば
 良いのではないか?!』
ガバッと起き上がって桜にキラキラした目を向ける空喜は、鳥と言うより子犬のよう。
「残念ながら、花火が延期されているのは花火が
 出来上がっていないからではなく、
 天気のせいですから、花火師さんを連れて来ても
 話は変わりませんよ」
『それでは桜との約束が果たせん…
 空から花火を見せてやると言ったじゃろう…』

「覚えていらしたのですね」
『あんな喜ばしい約束を忘れる訳が無かろう』
空喜が手を伸ばして桜の手を取ると、頬に寄せて唇を落とす。自分とは違うものだからなのか、空喜は桜の手が特に好きらしい。触れられて、触れて、近づいて。
「早くお空の具合が良くなると良いですね」
『……外に出られず桜に触れて居れるなら、
 それもそれで喜ばしい気がして来た…』
桜の膝の上に腕を台にして頭を乗せる。雨の音がしとしとと包み、桜は空喜の頭を撫でながらその静かな時間を楽しんだ。
 


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