「ほー。意外と器用なもんですね」

「後藤さん、言い方」
「私ってそんな風に見られていたんですね」

隠の仕事の前に応急処置などに使う薬や包帯など消耗品を受け取りに蝶屋敷に立ち寄った後藤は、アオイとひいろが調理場で何やら作業をしているのを見つけ声をかけてきた。

「ほら、絆創膏つけた手を隠しながらソワソワ感想を待つってのが大道なんじゃないんですか?」
「その偏った知識は一体どこから来たんです?、、」
後藤の見解に呆れるアオイにひいろは「でも残念ながら、もし怪我しても治っちゃうんですよね」とこれまた斜め上のことを言い出す。
だがしかし、ひいろは包丁が使えないわけではなかった。
「これでも、昔は弟とほぼ二人暮らしでしたから。
 でも、やらなくなってからが長いので、正直自分でもホッとしてるところです」

「粂野さん喜ぶでしょうね」
「それは勿論ですよ!そうでないと困ります!

 時間はまだまだありますから、がんばりましょうね!ひいろさん」
ひいろ以上に張り切っているアオイは次の料理の食材を洗い始めた。

「あっ、、あの、、後藤さん……」
少し言いにくそうに声を掛けてくるひいろに「なんすか?」と返事をすると、頬を染めて視線を彷徨わせている姿が目に入る。

ーーああ。またこの人は、、

「匡近が向かった場所に行くんですよね?

 ………あの、匡近には、、
 秘密にしておいて下さい」
だんだんと小さくなる声に、口元が緩んでしまう。
隠の制服が口元が隠れる仕様で良かったなんて口が裂けても言うつもりはないけど。
これだから見守りたくなってしまう。

「あーー。ハイハイ。余計な事は言いませんよ」

「ありがとうございます」
 
「ひいろさんっ!手を貸してください!!」
「あ、はいっ」
「じゃ俺、仕事戻りますわ。」

短く挨拶をして、お互いに背を向ける。


もしもこの時、未来を知ることができていたら、、
きっと後藤はひいろの手を取って匡近の元へ向かっていたことだろう。
でも、その時そこにいた誰もが、鬼殺隊の任務は命掛けだという事を失念していた。

必ず帰ると

そう思っていた…




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