「子どもの保護は無事おわりました。
 ……ですが、、」

後藤もそれなりに長いこと隠として鬼殺隊にいる為、後輩を連れて歩く立場でもある。
後輩の報告を受けつつ、建物内に入ると同僚の一人がおびえながら、実弥に声を掛けている所だった。

「不死川様。
 不死川様の出血量も、かなりの量でして…….」
「大したことねェよ。放っとけ」
怯えているのに実弥の状態を話し、なかなか引こうとしない隠が最悪の結果を口にしようとした。実弥は睨みつけ、その言葉を遮る。
後藤は実弥の傍に匡近が寝かされているのが目に入った。その赤さに走り寄りそうになるのを必死で抑える。

「不死川さん。本当に大丈夫なんですね?
 断言できます?」
後藤が口を挟むと、実弥は無言で頷いた。

「撤収すんぞ。出発できるやつから戻れ」
「でも、後藤ーー

「命かけて鬼と戦ってくれてんのは、この人たちだろうが。気持ちぐらい、くんでやれや」

最後は俺に任せろと、同僚を急かして座敷から追い出した。

僅かに意識が戻った匡近が、掠れた声で実弥を呼んだ。
血の匂いを消すための香を焚きながら後藤は口をつぐんでいた。思い浮かぶのは匡近とひいろが二人で並んで笑うそんな姿ばかり。

ーーよりによってなんで今日なんだ、、

どうして幸せになってはいけないんだ。
彼らは未来に手を伸ばしただけじゃないか。
粂野さんはひいろさんのために
ただ柱を目指していただけ。
ひいろさんは粂野さんのために
料理を作って驚かせようとしただけ。

彼らが伸ばした手は
禁忌に触れるようなものではなかったでしょう?
お互いの為に努力を重ねていただけで、
多くを望んだわけではないでしょう?

なのにどうして?

「後藤ォ。……こっちこい」
「………はい。」


「俺の、、わがままに、、付き合って、くれて。ありがとな、、」
「違います。俺が二人を見守りたくなっただけです」
「ひいろ泣くかな、、泣くよな、、、

 ……泣かせたく、、ないなぁ」

ーーだったら生きて下さいよ

「実弥。ひいろの事も頼む…。
 、、どうか、、、笑って、、いられるように」

「何言ってんすか。
 粂野さん居なくて、
 あの子が笑えるわけないじゃないですか」

つい口を挟んでしまった後藤の言葉に
匡近が困った顔で微笑んだ。

「本当は、、秘密って言われたんです。
 でも、言わせてもらいます。
 ひいろさん、アオイさんと一緒に料理をして待ってるんですよ。
 粂野さんが帰るのを待ってるんですよ」

「……そっか、、、それは、、食べたかったなぁ」

「な……あ、実弥……」
「あ?」
「俺が……いなくなっても
 ちゃん、と飯、食えよ…ちゃんとーーー」
匡近の言葉に実弥が短く返事をしている。
聞いているこちらの方が苦しくなってしまう。

ーー不死川さんは不器用で、、
  粂野さんはどこまでも弟思いなんだ、、、


「後藤くん、、、何、泣いてんだよ、、」

「、、死なないでくれよ、、、くめのさん、、」

実弥と後藤の顔を見上げ、匡近が笑う。
この世で一番、優しい笑顔で。

「あとは…任せたぞ………
 実弥…死ぬなよ…

 ……幸せ…にーーーー」


ーーーーーー

百日がひいろの元にたどり着いた。

「何を言ってるの……?

 嘘…。嘘…。……そんなの嘘に決まってる。
 
 な、んで?

 嘘よ!嘘!!嫌!

 だって、、
 そんなのってないじゃない………」

そのままひいろは倒れ、気を失った。
 




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