A朝顔


ここ連日雨ばかりで憂鬱な日が続いている。

「実弥さま!大変です!たーいーへーんーです!!」
「あぁ?!るっせぇな。何だよ?!」

柚充が実弥の服を引っ張ってどこかへ連れて行こうとする。
歩き難いったらない。

柚充の足は縁側で止まった。
あれ。と指を指す先にはすっかり元気のなくなってしまった朝顔。

「あぁ。ここんとこ雨続きだったからな。
 根腐りでもしちまったんじゃねーの?」

そこには口をとんがらせて不満そうな柚充。
「そんな顔しても仕方ねぇだろ。
 自然には勝てねぇんだよ」



ーーーーーーー

「なんて事があってよ。どっかに朝顔咲いてねぇか?」
「うむ!しかし残念ながら千寿郎もこの間残念そうに肩を落としていた!!」
「…そんな元気に肩はおとさねーよ」
「花の事なら、やはり女性陣に聞いた方が得るものがあるのではないか?」
「聞けるわけねぇだろ」
「何故だ?!柚充のためだろ?俺は千寿郎のためなら構わず聞くぞ!」


「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥というだろう!」




ーーーーーー

「お前も"柚充が"って言やぁよかったのに。なぁ実弥ちゃん?」
「分かってて揶揄ってる奴もいるがな。しかし考えなしに言葉足らずの発言であちこち聞き回った不死川の失策としか言いようが無い。というかそう自覚しろ。」
「もう分かってんだよ!!傷口に塩塗りに来るなや!!」

連日、あちこちで朝顔の事を聞いていた実弥は数少ない女性隊士の間で朝顔の人と言う看板が掲げられようとしていた。

しかし肝心の朝顔はどうにも見つかっていない。



「ねー。今日夜の任務の後、屋敷行ってもいい?別にあんたに用があるわけじゃ無いけど」
「は?」

そこに現れたのは時透無一郎。
どいつもこいつも敬うって言葉を知らねーのか?

「俺に用がねぇのに夜に来んのか?
 柚充はもう寝てるぞ」
「それでいいから言ってるんでしょ。それくらい察しなよ」

ーーーこのガキ一発殴ったろか!?

「そう言う事だから。じゃあね」

「何なんだ。アイツは、、」



ーーーーーーー

その夜

わさわさ音のする袋を持って無一郎は来た。
来るなり「何処か使っていい部屋あるでしょ?」なんて言い方をするから実弥はイラっとしたものの、真面目に付き合っていても仕方ないと客間に無一郎を通した。

客間の真ん中に座り、持っていた袋をひっくり返す。
それを見て実弥は目を向いた。

「突っ立ってないで、暇なら手伝ってよ」





翌朝

「実弥さま!大変です!たーいーへーんーです!!」
「何だよっ!」

再び服を引っ張りながら、目的の場所へ導いていく。

そこはあの客間。

「ほら!!」

そこには沢山の朝顔。柚充の顔は明らかに驚きと喜びできらきらしていた。

「全部折り紙だけどな。
 昨日時透が持って来たんだ
 本人なら居間に転がってると思うぞ」

柚充は聞くなり居間へ走って行った。

ーーーでもこれだけの数よく作ったもんだな。

折り紙の朝顔を眺めて見ていると、再び足音が戻って来る。

「実弥様、ありがとうございます!」
「あぁ?礼なら時透に言えよ」
「だって、いろんな人に朝顔の事聞いてくれたんでしょう?」
「………あの馬鹿、、余計な事を、。」

「柚充が笑ってくれたから、まぁ良いかと思った不死川実弥なのでした。ちゃんちゃん」

「時透!てめぇ勝手なこと言ってんじゃねぇよ」

「朝顔の実弥ちゃん」
「……ちゃん??」
「時透?お前、殺す、、。」
「わーこわいよー」※棒読み

無一郎は柚充にじゃあねと声をかけると、そのまま実弥から逃げながら帰っていった。

柚充は静かになった客間で改めて折り紙の朝顔を眺めていると外の明るさを感じた。

縁側へと続く襖を開ける



久しぶりの青空が広がっていた





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うちの朝顔が一株ダメになってしまったので。
きっと時透くんなら立体の朝顔もちょちょいと折ってくれるだろうと。
無一郎くんを描きたくなったけど、これでよかったのだろうか、、。

簡単なことではないと分かっていますが、各地で大雨被害に遭われている方が、早く元の生活に戻れますように。




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