3000hit御礼短編


小芭内は格子の中から手を伸ばし叫ぶ。
「やめて!やめて!狭が死んじゃう!」
その声は金や欲に取り憑かれた女たちには聞こえない。


ーー何でこうなってしまったんだ、、、。
小芭内は必死で振り返る。




数ヶ月が経ち、座敷牢の前通路には狭がいる事はほぼ当たり前として定着していた。
ーーまたこんなに運んできて、、
  小芭内はそんな食わねぇっていい加減わかんねーかな。

あぐらをかいた太ももの上で腕で頬杖をつき、呆れ顔でお膳を運ぶ女達を眺めていた。ボーッと眺めていた筈の狭は1人の女に目を留めた。


次々運び込まれるお膳を見て小芭内は吐き気がしていた。助けを求めて狭へと視線を向ける。
しかし、いつもなら合うはずの視線は合うことなく、狭は別な方を向き、みるみるうちに厳しい表情へと変わっていく。

「……狭?…」
一瞬のうちに不安が溢れ出し、押しつぶされる気がして小さく名前を呟いていた。

狭の体がゆらりと揺れ、突然飛び上がった。その体はお膳を運ぶ一人の女に掴みかかる。
「母ちゃんのかんざしを返せ!!お前なんかが付けて良い物じゃない!!」
狭の憎しみに染まった目を、怒りの溢れる声を聞いて、彼が来た理由を忘れていた事を小芭内は思い出す。

しかしそこからは見るに耐えない光景だった。
一人の少年に寄ってたかって暴力を振るう女たち。自らを飾っていたはずのかんざしは武器となり、女たちが去った後は、ぐちゃぐちゃになったお膳とあちこち血で濡れ呼吸もままならない狭の姿だった。

「、、ごめんな、、、小芭内と、、
 話すのは、楽しかった、、んだけどな、、どうしても、母ちゃんの、、、かんざしだけは……
 許せなかったんだ、、」
「狭!!もう喋らないで。
 誰か!!誰か!!医者を!!
 お願い!狭を助けて!!」
小芭内の叫ぶ声に応えるものは何もない。小芭内の目に涙が流れ続ける。
「なぁ、これ、、小芭内に託していいか?」

狭の手には一本のかんざしが握られていた。
小芭内は格子から手を伸ばす。
「ありがとな。小芭内、、」
手から手へかんざしが移ると狭は八重歯を見せてニカっと笑った。その瞬間、彼の腕は力なく落ちた。

ーーーーーー

狭は思う。奪われたからといって忍び込んで奪い返そうとしたのは間違いだったかもしれない。でも後悔はしてない。だって、小芭内に会えたんだ。牢を出て一緒に外の世界を走り回る事はできなかったけど、小芭内と話をするのはとても楽しかった。

あー死にたくねぇなぁ。
今度は小芭内に外の世界を見せてやりてぇな。
今度は命を救ってくれた小芭内の力に俺がなりてぇな。

どんな姿でもでも構わない。
弟みたいな小芭内の事守ってやりてぇなぁ、、


狭の頬を涙が伝った……




ページ: