3000hit御礼短編


アニメ派の方、伊黒さんの子供の時のエピソードを知らない方にはネタバレになります!!
すいません!感謝短編なのに配慮不足でした!!
読まれるかどうかは自己判断でお願いします
もう一度言います。ネタバレ含まれています。

よろしければ下へどうぞ。

ご覧くださいませ。








伊黒小芭内がまだ6歳。
彼は座敷牢に閉じ込められていた。

ある日その少年は格子を挟んだむこう側に転がり落ちてきた。
後に知る少年の名は鏑木 狭。(かぶらぎ きょう)
歳は9歳。彼は真紅の瞳をしていた。

彼と小芭内が過ごした時間は長いとは言い難い。しかしそれは彼らの始まりの物語ーーー。


ーーーーーー

「いってぇ!!そんなに殴る事はねぇじゃんか!!」

「お黙り!
 人の家に忍び込んでおいてそんな口聞けたきりかい!」
「何言ってんだよ!
 母ちゃんのかんざし盗んだのはお前らの方だ!!
 それに!蛇の化物隠してて、
 おかしいのはそっちだろ!!」

「秘密を知ったならあんたも蛇神様に食べてもらうしかないわねぇ。子どもの脳髄は大変美味だと仰っていたわ。こんな糞餓鬼でも、蛇神様の口の足しくらいにはなるでしょ」
狭に女の手が伸びる。
たとえ相手が女でも狭とてまだ力のない子供。

恐怖を感じ目をギュッと閉じた、、

ーーやばい顔してる、、
  最初から話なんて通じるはずが無かったんだ、、、。

狭は自分の軽はずみの行動を今頃になって後悔していた。家に強盗が入り大切なものを奪って行った。死んだ母ちゃんが大切にしていたかんざし一本。それだけを取り戻したかった。
他のものなんてどうでも良かった。
ーー母ちゃん。大切なもの取り返せなくてごめん。
  弱っちい息子でごめん。、、



「やめて叔母さん!僕、、話し相手が欲しかったんだ」
どうしてそんな事を言ったのか小芭内にも分からない。拳を握り、手が震えるのを必死でおさえようとしていた。
ただ、猫撫で声を掛け続ける気味の悪い者なんかじゃなく、意志を持った真紅の瞳に魅せられた。

「まぁ、話し相手くらいなら、、」

小芭内の一言で、狭の運命が変わった。
叔母と言われた女は狭を蛇神に差し出す事はやめ、小芭内、狭それぞれにお互いを見張る事を条件に話相手を認めた。狭は牢の掃除など雑用もさせる為、座敷牢前の通路が定位置となった。

ーーーーーー


いつもの様に牢の格子に背を預けて2人は何でもない話をする。狭は小芭内が生まれてこの方、外に出たことがないと知るといろいろな事を話して聞かせた。空の青さも季節の移ろいも全て狭が小芭内に教えた。狭は話を聞かせる時は格子に背を預けて、会話をするときは向き合って話をするのだった。

真紅の瞳が小芭内を向く。

「なぁ小芭内?何であの時、俺を助けたんだ?」
小芭内は聞かれるまで考えた事もなかった。
ーーなぜ殺してほしく無いと思ったのだろう

直ぐに本当の答えは見つからない。でも、一つ思い浮かぶことがあった。

「……たぶん、、おかしい事をおかしいと言ったから」
狭はポカンとまん丸な目を見せた後、八重歯を見せて「そんだけか」と笑った。


狭が居るだけで牢にいる事は変わらないのに、小芭内は全く違う心持ちだった。実際も大量の食い物のせいで油の匂いが充満してくれば、なんとか風を入れて匂いが籠らないように気を回し、ご機嫌取りの女どもは睨みを利かせて追い払ってくれる。
夜に聞える不気味な音も恐怖は拭い去る事はできなかったが、狭が居れば心のどこかで大丈夫だと思えた。

ーーもしも兄がいたら、こんな感じだったのだろうか
 




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