2000hit御礼!!
「やはりけいこは隠れるのが上手いな!」
ぼんやりと人影が見える。
「………さ、ま?」
「さあ手を伸ばす!」
岩に打ち付けられ体はまるで歯車が欠けたからくり人形の様に動きが鈍い。そして精一杯手を伸ばした途端背中の痛みで力が抜けてしまった。
腕が落ちる
けいこは諦めの気持ちで目を閉じた。しかしその手は声の主がしっかりと掴んでいた。
思わず涙が込み上げる。けいこは諦めてしまったのに、彼、煉獄杏寿郎は諦めずに手を掴んでくれたのだ。狭い岩の隙間から引き上げられたけいこはそのまま煉獄の腕の中に収まる。
「やっぱり煉獄様は私を見つけてくれるんですね」
「頭も打って居る様だから動かない様に」
「怒ってます?」
「けいこなら上にいた段階で下に鬼がいる事は分かっていたのだろう?人の為に動いてしまうのは仕方ないにしてももう少しやり方を考えるべきだったのではないか」
「失敗しちゃいました。」
てへへと笑うけいこ。いつもより力ないその笑顔が煉獄の心にモヤモヤをもたらす。
「早く医者に見せなければな。」
煉獄は足場の悪さなどなんのその。けいこを腕の中に抱えたまま一番近い藤屋敷へ。
ーーーーーー
「全く不甲斐ない」
煉獄の呟く様な声にけいこは布団に横になったまま目を向ける。
「けいこも隊士として刀を振る様になってしまったな…」
「煉獄様のおかげですよ。あの日預かるって言ってくださったから今の私があるんです」
煉獄は目を合わせようとしない。いつものどこを見ているのか分からないのともまた違う。
「……刀を取らずともいい世にしたかった。
不死川の継子となってから2年の月日があった。しかし、それでもまだ遠い、、」
けいこは継子であっても柱ではない。もっと自分の事を考えて自分の事を優先しても良いのだ。
13歳を超えたばかりなのに、周りのことまで気にし、背負いすぎている。
本当は言ってやりたかった。
背伸びをする必要はないと。
時には逃げても良いんだと。
だが、必死に鍛錬に励んできた姿を知っている。だから煉獄はそれを言葉にしてやる事が出来なかった。
体はまだ痛い。それでもけいこは煉獄のどこか苦しそうな顔に横になっていることなんて出来ず、体を起こした。擦り傷だらけの手で煉獄の手をとる。
「そんな事言わないでください。そんな悲しい顔しないでください。私は今までを後悔していません。だって、今こうして煉獄様と話すことが出来ています。それが幸せなんです」
「……っ!」
煉獄の腕はけいこを抱きしめていた。その体は刀を振っているとは思えないほど華奢で、涙が出そうになる。
「れ、煉獄さま、、い、いたいれす、」
「す、すまない!!」
涙を堪えるつもりが、けいこを包む腕に力を入れてしまったらしい。慌てて肩に手を置いて離れるとけいこは笑った。
「そうだ!聞きたいことがあったのだ!」
心当たりのない申し出にけいこは首を傾げる。
「柱を順番に呼んでみてくれ」
「?…えっと、実弥様、しのぶさま、蜜璃様、伊黒様、時透様、悲鳴嶼様、冨岡様、煉獄様、天元様ですよ?」
何か?とけいこは首を傾げる。
「あ、いや、不死川、胡蝶、甘露寺を下の名前で呼んでいるのは分かるのだが、、何故宇髄もなんだ?」
聞かれる方が不思議といったポカンとした顔
「天元さまが、名前の方が派手だからって。」
「ああ。それで!」
妙に納得がいって他に言葉が出てこない。
ふと、煉獄の頭に一つのひらめきが生まれた。
「もし、名前で呼んでくれと言ったらけいこは呼んでくれるのか?」
どーなのー?よんでくれるのー?といいたげな曇りの無い期待が込もった眼がけいこを見つめる。
「あ、えっ……むっ、、無理です」
「無理なのか!!」
なにかを呟き下を向いてしまったけいこ。
その顔を覗き込むと煉獄は思わず自分の顔が火照るのに気づいてしまった。
けいこの顔が真っ赤に染まっていたから。
その姿があまりにも愛らしくて、煉獄はけいこの額に唇を寄せる。更に驚いて赤い顔を上げたけいこに、照れてしまったことを隠したくて、さも余裕があるふりをして笑ってみせると、けいこは布団をかぶって丸まってしまった。
ーーよもやよもや。
けいこが大福のようになってしまった。
「、、けいこ、」
布団をつつくと顔だけ少し出てくる。
頬を膨らませて何やら言いたげである。
「おいで?」
けいこに向かって両手を広げる煉獄。けいこはゆっくりと布団から出て煉獄の前に立つと倒れるように首元に抱きついた。けいこの頭の上には大きな煉獄の手。
その手はやはり、おひさまみたいに暖かかった。
「……杏寿郎さま」
「よもや!!!」
fin
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2000hit感謝記念!!
まずは、アンケート協力いただきました皆様に感謝です。本当にありがとうございました!!
ほとんど僅差でしたが、結果はこの人!!
村田さ、、、じゃなくて煉獄さんです!
リクエストで、けいこ様より「実弥の継子の番外編で実は杏寿郎と両思い」を頂きまして、書いてるうちに楽しくなりました!!管理人は煉獄さんも大好きです。
もとは不死川さん推しではなかった人間ですので。
お気に召すものが書けていたら幸いです。
今回の夢3分の1は村田さんですけどね。村田さんは、、面白いですよね。
そしてせっかくなので長編で入れてなかった宇髄さんだけ名前呼びのネタを入れてみました。煉獄さんの家に滞在中は杏寿郎様、千寿郎くん、槇寿郎様(又はお父様)と呼んでますが基本的に煉獄様呼びです。
2000hit記念、楽しんでいただけましたら幸いです。
今後も「うたかた」にお立ち寄りいただけましたら嬉しいです。今後も頑張ります!
21.8.25
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